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関西広域連合  住民の理解得る努力を

 都道府県でつくる初の広域行政組織として「関西広域連合(仮称)」を年内にも設立することで、京都と滋賀、大阪、兵庫など2府5県が合意した。
 検討が本格化したのは2007年。ようやくここまでたどり着いたとはいえ、3県が発足当初からの参加を見送り、鳥取と徳島は部分参加のスタートとなる。合意した7府県にも設立時期や将来像をめぐり温度差がある。
 設立に必要な規約案に対する各府県議会の議決を得られるかは、現状では見えづらい広域連合の利点を示し、住民の理解を醸成できるかにかかる。
 8日に示された設立案では、当初の事務として防災や観光、医療、産業振興など7分野を挙げた。各府県にとって取っつきやすい、いわば「最大公約数」の事務を選んだだけに、従来の府県連携で事足りるものも多い。
 どの府県も財政のやりくりに四苦八苦する中で、費用対効果の不鮮明な枠組みに分担金を払う余裕はない。広域連合を「小さく産んで大きく育てる」(京都府)というなら、その将来像をどう描くかが重要になる。
 設立案では業務を段階的に拡大、関西、大阪(伊丹)、神戸3空港の一元管理に加え、河川や国道の管理、電気・ガス事業の許認可など国が担っている事業の受け皿となることを目指す。
 しかし、段階が進めば進むほど、各府県の「同床異夢」が表面化する懸念もある。例えば、関西3空港の一元管理について、橋下徹大阪府知事は「伊丹廃港」の持論を譲らない。
 道州制に対する考え方でも賛否が分かれる。広域連合を「道州制へのワンステップ」とする橋下氏に対し、井戸敏三兵庫県知事は「道州制つぶしに役立つ」と正反対の論理だ。山田啓二京都府知事や嘉田由紀子滋賀県知事も、大阪主導の論議には距離を置く。
 地方分権とは地方の特性を生かし、その地方にふさわしいやり方で暮らしやすさを高める政策を地方が自ら考えて実行することにあるはずだ。組織論の空中戦では権力の縄張り争いとしか映らない。地方分権の本旨を忘れず、今後の議論を進めてもらいたい。
 広域連合はあくまでも、国からの権限と財源の大幅な移譲を前提としている。国が地方を法令や補助金で縛るのをやめない限り、広域連合も「巨大な出先機関」になりかねない。
 鳩山政権は今夏にも、地方への権限移譲や国の出先機関の統廃合など基本的な考え方をまとめた「地域主権戦略大綱」を策定する考えだ。
 中央省庁をどう再編し、政府の役割をどこまで絞るか。鍵を握る二つの組織の設置法案が通常国会に提出される。鳩山由紀夫首相を議長に橋下氏らが加わる「地域主権戦略会議」と、関係閣僚と地方6団体でつくる「国と地方の協議の場」の成否が問われよう。

[京都新聞 2010年01月10日掲載]

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