私的整理か、法的整理かで揺れていた日本航空の再建をめぐる協議にようやく決着がつきそうだ。
政府が、官民出資の企業再生支援機構が主張する法的整理での再建を採用する方針を固めたからで、会社更生法を適用し、裁判所の管理下で手続きの透明性を確保する考えだ。
債権者の合意による独自の私的整理案をまとめた日航や主要取引銀行3行は、倒産のイメージが強い法的整理では「信用不安が広がる」として難色を示していたが、分が悪い。
というのも、日航は8千億円を超す債務超過の状態にあるとされるため、公的資金の投入を抜きにした再建は無理との見方が強い。
国民の負担増につながるとなれば、公正さと透明性の確保が大前提というわけだ。取引銀行3行も、やむを得ないとして来週にも政府方針を受け入れる見通しになった。
それにしても、なぜ一私企業の救済にタブーとされる公的資金が投じられなければならないのか、疑問に思う国民も少なくないだろう。
「抜本的な改革をしなければ、国民の税金をより多額に使うことになる」という前原誠司国土交通相の言葉だけでは足りない。
日本の「空の足」を守るためというのなら、ここまで経営を悪化させた日航や国の責任を含め、政府が納得のいく説明をすることが欠かせない。
企業再生支援機構が描く再建策は、日航に融資する取引銀行や裁判所と債権カットの方法などについて調整し、日航の更生法適用申請と同時に支援決定する「事前調整型」の法的整理のようだ。
運航の継続に支障が出ないようにするためで、政府の方針とも合致する。事前調整型は昨年、米ゼネラル・モーターズ再建の際にオバマ政権が採用した手法だ。日本では前例がほとんどないうえ、準備期間も短いだけに十分な調整が要る。
燃料や部品購入など一般商取引による債権は全額保護することになりそうだ。といっても、いったん破綻(はたん)させる荒療治には違いなく、運航への支障が本当に出ないのか、利用客離れを防げるかなど課題は多い。
国内線29路線の廃止と国際線の大幅縮小、さらには1万人超の人員削減など、リストラ策の影響が出ないかも心配になる。
事実、日航の安全対策をチェックする第三者機関「安全アドバイザリーグループ」座長で、作家の柳田邦男さんも「安全のとりでを守り抜くように」とする提言書を同社に出した。
日航の甘い経営体質を考えればリストラは当然のようだが、万が一にも空の安全が脅かされるようなことがあってはならない。肝に銘じてほしい。
[京都新聞 2010年01月10日掲載] |