財務相辞任という大きな波乱が年明け早々、鳩山政権を襲った。
鳩山由紀夫首相は藤井裕久財務相の後任に菅直人副総理を起用した。菅氏が受け持ってきた国家戦略担当相は仙谷由人行政刷新担当相が兼務する。
通常国会を目前に控え、予算案をまとめた財務相が辞任するのは異例だ。とりわけ首相の信任が厚い内閣の「重鎮」だけに政権への打撃は大きい。
ただ就任以来、決断力に欠ける場面が目立った首相も、今回は素早く動いた。デフレ対策など喫緊の政策課題が山積する中、人事をしくじれば政権の屋台骨まで揺るぎかねない。
予算編成に携わった菅氏を財務相に起用し、18日召集の国会審議への影響を最小限に抑えた。同時に仙谷氏の国家戦略担当相兼務で、内閣の布陣を大きく変えることなく難局を乗り切りたいとの意図が垣間見える。
菅氏はさっそく財務省改革に対する意欲を表明した。予算編成に際し「脱官僚依存」が道半ばとの思いが残ったということだろう。政治主導の取り組みに期待したい。併せて鳩山政権内で最も財政規律にこだわってきた藤井氏の辞任によって、これ以上、政策実現と財政再建のバランスを崩してはならないことも肝に銘じてほしい。
政権与党の人材不足を印象付けたことも否めない。公約実現を推進する「両輪」の国家戦略室と行政刷新会議を、ともに仙谷氏に託さざるを得なかったわけだ。そこで両組織を並行していかに活用できるかが肝要となる。設置理念が異なる両組織を有機的に生かし、実効性を高めてもらいたい。
藤井氏の辞任理由が「過労による体調不良」ならやむを得ないが、「辞めたのは本当に健康問題だけが理由なのか」(大島理森自民党幹事長)との疑問もある。藤井氏が幹事長を務めた旧自由党の政党交付金問題が浮上しているほか、予算編成をめぐって公約実現を優先させた民主党の小沢一郎幹事長の「横やり」への嫌気や、菅氏が政治主導を唱えて積極介入したことなどへの反発などが指摘されている。
いずれにせよ首相が入閣を強く要請した藤井氏の辞任は、首相自身の求心力や、政府と党の力関係に影響が及ぶのは避けられない。首相は態勢の立て直しを急ぐとともに、危機感を持って指導力を発揮しなければならない。
政策決定の一元化の掛け声とは裏腹に、小沢氏の発言力が増し、権力の「二重構造」が強まれば内閣支持率の低下に拍車が掛かろう。
旧民主党を共に旗揚げした盟友である「鳩菅」の連携強化で、仙谷氏ら各閣僚の力量を十二分に引き出し、官邸主導、政治主導の政権運営を目指してもらいたい。閣僚辞任を機に政権が弱体化した例は少なくないものの、ピンチは逆にチャンスにも転じられる。
[京都新聞 2010年01月08日掲載] |