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2010年01月16日阪神大震災から15年 まずは「自助」しっかりと
6400を超える人命が奪われた阪神大震災から17日で15年がたつ。ハイチでは先日、大地震が起き、死者は数万人規模に達するともみられている。大惨事をもたらす地震への恐怖と備えの大切さを、あらためてかみしめたい。
阪神大震災の後、政府は地震調査研究推進本部をつくり、全国にある活断層の調査を進めた。活断層は、阪神大震災のような「直下型地震」の繰り返しによって地形に刻まれた“傷”だ。その位置や長さを調べることで、そこで再び起こると考えられる地震の規模と揺れを予測するのが狙いだった。だが、活断層の情報だけでは過小評価になることが分かってきた。
京都大防災研究所の遠田晋次准教授が1923年から2007年までの地震を分析した結果、規模がマグニチュード(M)7以上の地震で、活断層をつくる地表のずれが現れたのは44%だった。言い換えると、活断層をどんなに完ぺきに調べたとしても、将来起こり得るM7以上の地震の半分以上を見逃している、ということだ。
遠田さんによると、地層が軟らかいと、ずれが地表に顔を出さなかったり、顔を出しても浸食されて見えなくなったりするためだという。
実際、00年の鳥取県西部地震(M7・3)や08年の岩手・宮城内陸地震(M7・2)は目立った活断層がない場所で起き、研究者に衝撃を与えた。遠田さんは地質や地形のデータを基に、活断層調査の見逃しを補う方策を提案している。
大地震はいつでもどこでも起こる。そう考えるべきなのに、認識はなかなか広まらない。
損害保険料率算出機構が昨年実施した意識調査によると、「住んでいる地域で近い将来、大地震が起こる」と思っている人は地震保険の加入者で全体の3割、非加入者では2割ほどにとどまる。これでは、地震対策に積極的に取り組もうという機運は盛り上がらない。地震に対し、わたしたちの社会はどんどん弱くなっているのではないかという問題意識を共有したい。
本県は大都市圏に比べ、地域での人のつながりが深いとされる。それでも消防団活動の停滞が指摘されているほか、婦人会も減っている。一方で高齢化の進展が速く、いわゆる災害弱者が増えている。自主防災組織の結成がかなり進んでいるとはいえ防・減災という点では必ずしも楽観できる実情ではない。
「自助」「共助」「公助」は災害対応に重要な3要素だ。中でも自助がまず基本だろう。
自宅が損壊すれば自分たちが困るだけでなく、交通を遮断したりして救助や地域の復旧を妨げるかもしれない。逆に無事であれば、近所の人の手助けができるかもしれない。そう考えれば、被害を減らすための備えがいかに大切か実感できないか。耐震補強や家具の固定など、前もってできることを一人一人がしっかり実行したい。