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2010年01月15日新にしんずしを全国へ 敦賀活性化へけん引期待
正月の伝統料理に「にしんずし」が登場する家庭が多いのは敦賀の特徴だ。県内でもニシン漬けを作る地域も多いが、スーパーや土産物店に商品が並ぶのは嶺南地域の特色。この地域限定のにしんずしをブランドに育て、全国展開を目指すプロジェクトを敦賀商工会議所が立ち上げた。不況の中、地域活性化の起爆剤としたい考えだ。
このにしんずしは発酵食品の一つ。冬季の保存食として北前船が行き来した江戸時代から北海道や東北、北陸などで親しまれてきた。材料は身欠きにしんとダイコン、麹(こうじ)が主。半干しダイコンの短冊切りに麹、塩を混ぜ、圧を加えて3週間ほどで食べられる。ニンジンや昆布の薄切りなどを合わせる地域や家庭もあり種類も豊富だ。
同会議所では経産省の地域資源全国展開支援事業に応募し、昨年5月に調査研究事業として認可された。敦賀ブランド開発研究会を設置し、市内の生活改善研究グループやJA、料理研究家などワーキンググループが数ある候補の中から「風土に根ざし、他地域と明らかに区別される」「これまでブランド化されていない」を基準に、にしんずしを選定し商品化研究を進めてきた。
他地域との差別化で最も強調するのは乾燥米麹の使用。全国になれずし、飯(い)寿司(ずし)類は多彩で麹の代わりにご飯を使う地域もある。乾燥米麹を使う敦賀のにしんずしはドロドロの半液体状の飯寿司に比べ、食感はサラサラで酸味が少ないのが特徴だ。関西の学生30人のモニタリングでもほぼ全員が「まあまあおいしい」以上の評価を得た。若者にも受け入れられる味であることが証明されたことは心強い。
地域特性を打ち出すため、にしんずしの材料、製造方法など定義を設定した。商品化へ味の統一を図るためだ。さらに付加価値創造へ地場産材料を加味した新にしんずしの可能性も追求。魚介類、伝統野菜などを加えた11種類を試作するなど工夫を重ねてきた。
今後は、11月に開催したフォーラムの試食会で人気の高かった従来のにしんずし、タイの燻製(くんせい)入り、ワラサ入りの3種に絞り、イベント出品で評価を探っていきたいとしている。
だがブランド化には通年での製造供給、味の安定化、販路確保など難問が待つ。特に冬季のゆっくりした発酵が特徴の製法を夏季に再現できるかが難関となる。市内の既存3製造業者との連携も検討すべきだろう。
注目を浴びる商品を生み出すには研究の継続や話題づくりも重要だ。知名度向上へ全国なれずしサミットや「我が家の味」コンテストも模索。誰もが作ったり味わったりできるレシピ作りや農漁業者、流通業者、飲食店とのタイアップで普及を目指す。食品開発は同会議所にとっても貴重な事業。地域活性化へのけん引材を目標に、次の挑戦にも役立つノウハウ蓄積事業としても成果を期待したい。