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2010年01月09日水仙植える運動5年目 県人の憩いの場拡大期待
東京都内各所に本県の花、水仙を咲かせようと、都内に住む本県出身者らが取り組んできた植栽活動が今年5年目を迎えた。これまでに植えた場所は、本県ゆかりの史跡や公園など都内を中心に24カ所に上り、球根の数では7200球に達した。植栽活動の輪をさらに広げていきたい。
植栽に取り組んでいるのは県のふくいブランド大使らでつくる「越前水仙を植える会」(林健彦世話人)。2005年秋に新宿区の矢来公園(若狭小浜藩邸跡)に建立されている石碑の周りに、球根200球を植栽したが始まりだった。
これをきっかけに旧越廼村から球根を譲り受けたり、県の補助を受けて毎年秋に区立公園など場所を探して植栽を続けている。
主な植栽場所をみると品川区の大井公園(鯖江藩邸跡)、中央区の越前堀公園(福井藩上屋敷跡)など本県ゆかりの地が中心だ。林さんらの「故郷を離れた県人に安らぎを与える場を」との思いで地道に続けている活動には頭が下がる。
こうした取り組みは地元老人クラブや町内会などの賛同も得て、広がりつつあるようだ。一昨年からは専門家を呼んで、水仙の植え方などを都民に指導するセミナーも企画、実践している。ガーデニングブームも手伝って「植えてみたい」と名乗りを上げる都民も少しずつ増えてきたという。
植える会として当面の目標は都内23区すべてに最低1カ所は水仙の咲く場所をつくることだ。今年秋には練馬区のちひろ美術館など6区を新たに開拓し、目標まであと4区に迫る予定。いずれも100球程度の植栽で広い場所を確保できるわけではないが、確実に県人の憩いの場は増えそうだ。
今後は活動をどう維持していくかが課題となるだろう。ブランド大使の活動費として受けていた県の補助は11年度で終了する。このため球根を供給してもらえるスポンサー探しや、福井にゆかりのある民間企業への支援要請などの取り組みも必要になる。さらに、県内からの支援、協力があってもいいのではないか。
植える会の正式なメンバーは15人程度だが、林さんは「賛同者による植える会が地域ごとに生まれてくれれば」と期待する。水仙が定着すれば、球根を掘り起こして植え直す改植や花壇の維持管理などの人手も必要になってくる。これまで以上に賛同者を増やしていくことが欠かせない。
水仙といえば、冬の荒海や風雪に耐えながら、かれんに咲く姿を思い浮かべるが、ビルの谷間で咲き誇る姿もまた、違った趣がある。できればたくさんの人たちに水仙の素晴らしさを見てもらいたい。水仙を知ることで本県の産地に足を運ぶきっかけになれば、観光客誘致の一助にもなる。息の長い活動として定着していくことを願う。