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2010年01月08日竜馬にみる福井 郷土躍動の時代、再認識

 幕末の風雲児坂本竜馬がことし注目の的だ。先ごろ発表された「悩みを相談したい歴史上の人物」1位をはじめ、どんなジャンルの人気投票でも最上位を争う歴史上希代の英雄は、越前福井と極めて深いかかわりがある。裏付ける郷土史料なども多数保存されているが、竜馬と同様に、この時代の福井がいかに先見性に富み革新的だったか、それらから読みとれる。

 身分にかかわらず人材を登用した福井藩主松平春嶽は、郷士身分にすぎない竜馬とも会ったとされる。神戸海軍操練所の設立に巨額資金を融通、西欧列強の圧力で四面楚歌(そか)にあった日本の海軍力増強に尽くした。竜馬を勝海舟に引き合わせたのも春嶽、との見方もあるほど密接な関係だったという。

 竜馬が西郷隆盛らと並び「天下の人物」とした福井藩士三岡八郎(由利公正)は、富国論に感銘した竜馬から、新政府の国家財政担当を頼まれている。竜馬の新政府方針「船中八策」を吟味し、明治の基本政策「五か条の御誓文」の原案を練ったのも三岡だった。

 政策ブレーンとして肥後藩(熊本)から福井藩に招いた横井小楠の開明的国家ビジョンは三岡、竜馬らに大きな影響を与えた。竜馬が立ち上げた日本最初のカンパニー海援隊(亀山社中)には越前出身者が6人ほどおり、時代を先駆けた。これだけをとっても竜馬という存在は、“福井の維新”へ興味を沸き立たせてくれる。

 福井市立郷土歴史博物館には、こうした福井の躍動ぶりを刻んだ史料が存分にそろっている。昨年オープンした県立こども歴史文化館でも、同時代の人物像を平易に学ぶことができる。ぜひ一度足を運び、福井人の誇りを再認識したい。願わくば手紙や日記などをさらに現代語訳し、子どもたちにも理解させたい。

 全国では昨年夏以降、竜馬関係の話題がめじろ押しだ。長崎市で亀山社中の建物が記念館として復元され、ゆかりの自治体首長らは「龍馬伝サミット」を開催した。寺田屋事件で難を逃れるのに使ったとされるものと同型の銃を高知地検が押収したが、廃棄を免れ博物館に保管された。寺田屋からの逃走の模様を詳細に記した京都所司代への報告文書が見つかり、高知県立坂本竜馬記念館が公表。函館市にも竜馬記念館がオープンし、竜馬あての年賀はがきまで製作された。

 各地が競うように仕掛けている中で、県は幕末ブランドを活用し福井を全国にアピールするという。竜馬を縦糸に福井の偉人たちを横糸に、維新回天をドラマチックに演出するような、県民が高揚するプランも期待したい。

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