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2010年01月07日藤井財務相辞任 予算案審議 万全期せるか

 鳩山由紀夫首相は、体調不良を訴えた藤井裕久財務相の辞任を了承、後任に菅直人副総理兼国家戦略担当相を充てることを決めた。仙谷由人行政刷新担当相が国家戦略担当相を兼務する。予算案を編成した閣僚が国会審議を目前に辞任するのは極めて異例だ。内閣発足後初の、しかも重要閣僚の辞任であり政権には大きな痛手である。
 18日召集予定の通常国会では2009年度第2次補正予算案、引き続いて10年度予算案の審議が控えている。二番底を回避し景気浮揚を図るため、両予算の早期成立は最優先課題である。新体制の下で万全を期すことができるか、試練に立った。
 予算案編成は激務だ。藤井氏は財務相に就任後、自民党前政権時代の概算要求やり直しに始まり、税収が大きく落ち込んだ中での赤字国債の大量発行と財政規律との板挟み、さらには民主党マニフェスト(政権公約)関連の予算圧縮など、心労も重なったことだろう。
 77歳の藤井氏は閣内最高齢、民主党国会議員の中でも2番目の高齢である。予算委員会では連日7時間近い審議が行われる。長丁場の国会を副大臣の答弁でしのぐわけにはいかない。
 そもそも藤井氏は先の衆院選で引退を表明していた。だが民主党の要請で比例代表で当選。財務相起用には小沢一郎民主党幹事長が難色を示したが、首相の強い意向があった。大蔵省出身で細川、羽田両連立政権で蔵相を務めた実績に加え、円満な人柄と論客ぶりは党内で貴重な存在だった。閣僚経験者がわずか4人という中では、まさに扇の要であった。内閣の重しが外れることは政権運営の不安定要因となりかねず、首相のさらなる指導力低下も懸念される。
 藤井氏の辞任については菅副総理、小沢幹事長との確執も取りざたされた。菅氏とは予算案編成をめぐる権限争いがあり、小沢氏とは西松建設の巨額献金事件の際に代表辞任を主張したことで溝ができたとの指摘もある。辞任は健康問題が主因だろうが、小沢氏との関係などに嫌気がさしたことも考えられる。
 首相は速やかな人事で面目を保ったが、党を仕切る小沢氏の意向に配慮せざるを得なかった面はあろう。”小沢支配”がさらに強まる可能性は否定できない。
 政権交代後、初の予算案審議は鳩山内閣が目指す国づくりの第一歩と位置付けられる。自民党は「ばらまき予算」と厳しく追及する構えで、「政治とカネ」の問題もある。国会は冒頭から波乱が予想される。
 菅氏は、財務に熟知し官僚とも呼吸が合う藤井氏とはタイプ的にも違い、今後の懸念材料はある。だが民主党が掲げる政治主導の面から、主務大臣の予算委での答弁はゆるがせにはできない。その意味で閣僚経験があり答弁上手、予算編成にかかわった菅氏が就くのは妥当ではある。予算の成否は内閣の行方と密接に関連している。覚悟して国会に臨まなければならない。

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