福井県の総合ニュースサイト 福井新聞オンライン

サイトマップ


全国の速報

論説

2010年01月05日鯖江の「市民主役条例」 らしさ前面にまちづくり

 鯖江市は、市民の知恵、活力をまちづくりに生かそうと「市民主役条例」(仮称)の制定に取り組んでいる。「自治基本条例」制定は全国で広がっているが、今回の鯖江市の試みは少し趣を異にしている。市会一般質問に対し、牧野百男市長は「自主自立の道を選んだ鯖江市が取り組んでいる、市民を主役にしたまちづくりを明文化したい」と答弁しており、まちづくりに鯖江ブランドの確立、いわゆる“鯖江らしさ”を前面に打ち出したい考えだ。

 鯖江市政は、平成の大合併で混乱した。▽武生市などと丹南で合併▽中核市実現へ福井市などと合併▽鯖江市をそのまま残す合併反対―の3派に分かれた。最終的に、福井市との合併を前職市長が白紙撤回したことに伴う解職請求が成立、その出直し選挙に牧野氏が担ぎ上げられ、当選した。財政立て直しを最重要課題として取り組んでいるが、2期目に入り、就任以来掲げてきた「市民が主役のまちづくり」に本格的に乗り出す。地方分権一括法の制定で特色を生かした地域経営が可能になったこと、また鯖江市の住民人口当たりの職員数が県内最少で、まちづくりに市民の協力が不可欠との事情もある。

 「合併しなくて良かった」というのが行政、市民の意見の大勢を占めているようだ。鯖江市は現在、第5次市総合計画を1年間前倒しして2010年度から行うために策定中。また、1月15日には市制55周年を記念し制定した「ふるさと鯖江の日」の行事を行う。これらに合わせ、今後の鯖江のまちづくりの指針となり、市民、行政が共通認識を新たにしたいというのが今回の条例制定の狙いだ。

 条文は、鯖江市のまちづくり理念を具体的に示すものにしたいという。基本理念として「市民主役の自覚」「行政の市民意思の尊重」「情報の共有化」などを盛り込む予定。具体的な取り組みとしては、歴史、文化、産業技術力など「地域の宝」についての知識、理解を深める学習や、崩れつつある地域コミュニティーの再構築、各種団体、ボランティアなどが連携し、広範なまちづくり事業に市民がかかわりやすい体制を整える。条文は10条程度に絞るという。

 条例案策定委員は公募4人と地域団体などからの12人を合わせた16人。今月中旬に条文素案を作り、市民からパブリックコメントを募集。2月中に条例案として完成させ、3月定例市会に上程する予定。鯖江の三大地場産業である眼鏡、繊維、漆器を取り巻く状況は厳しい。しかし、少子高齢時代にあって、鯖江市は人口が微増ながら増加している県内で唯一の市。住民が自信を持ち「主役」となってまちづくりに参加できる成案を望みたい。

ニュースランキング

ぷりん

福井新聞文化センター 風の森倶楽部


〒910-8552 福井県福井市大和田町56

TEL:0776-57-5111

本ページに掲載の記事・写真などの一切の無断掲載を禁じます。