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2010年01月03日建築が学校を変える 野心的試み全国へ広がれ
新年早々、とっぴな質問だが、あなたは、学校というと、どんなカタチを思い浮かべるだろうか？ 校舎のデザインから、「四角」とか「マッチ箱形」という人が多いのではないだろうか。ところが最近、学校建築に対するイメージが、ここ福井から大きく変わろうとしている。
■教育界からの挑戦状
「ここ最近、福井県内の小中学校の視察が増えている。教育関係者だけでなく、建築、設計の関係者がよく視察に来るようになった」と、県内のある設計業者から聞いた。視察の対象は、南越前町の今庄小、鯖江市の中河小、大野市の有終東小、福井市の至民中、坂井市の丸岡南中などで、ここ数年間に新築された小中学校ばかり。斬新なデザインの校舎が多く、教育と建築の在り方の新しい試みが他県の建築関係者にとっても「学ぶ点が多い」という。
至民中の学校づくりの軌跡を追った新刊本「建築が教育を変える 福井市至民中の学校づくり物語」（鹿島出版会）が先月、出版された。著者は福井市の前教育長だった渡辺本爾氏ら５人。一昨年４月に新築開校した同校は、全国でも５０例ほどしかない「教科センター方式」を導入し、「７０分授業」を行うなどユニークな学校だ。
同書を読むと、市教委と学校側が「従来にない�牾惺司顕修料和き瓩鯡椹悗甲羈惺擦鮴犬濬个靴燭ぁ廚箸龍�い情熱を持っていたこと、また設計者がこれを�犇軌薐Δ�らの挑戦状�瓩伴�け止め「生徒の自立を促す学校デザインは、どうあるべきか」と熟考し、両者ががっぷり四つで学校づくりに取り組んだ過程が分かる。設計側が生徒や地域・ＰＴＡ、教職員と行ったワークショップは１４回にも。これ自体も新しい試みだ。
■「指導伝達」教育からの脱却
実は、学校の建築デザインが「変わる」のは、至民中に限ったことではなく「すべての学校に突きつけられた課題」と、同校の新築計画に携わった福井大大学院教育学研究科の松木健一教授（５５）は言う。
同教授は、直線的な四角い教室や校舎は明治維新の教育制度の下で生まれた、知識や技術を効率よく子どもたちに伝達、指導するための「カタチ」だという。欧米諸国に肩を並べることを急いだ明治時代や戦後の高度成長期には、それなりの効果はあった。しかし「子どもたちに『生きる力』が求められる現代では、あのカタチは合わない」と話し、教員が一方的に指導、伝達する教育から、子ども自らが▽判断する▽解決策を見つけ出す▽表現力を身につける―教育を目指すには「学校建築が変わらなければならない」と言う。
■「葉っぱ形」になった理由
至民中の校舎は、上から見ると�猴佞辰儉瓩侶舛鬚靴討い襦Ｋ椶涼�者の一人で、設計を担当した柳川奈奈さん（３５）は、敷地が里山だったことをヒントに「教育委員会から出された、生徒の学びを引き出す、個性を大事にする空間は、どうあればいいかを念頭にかなりもがいた。そして出てきた答えが、柔らかいデザインだった」と語り、生徒一人一人が里山の葉っぱであってほしいと願って、あのカタチになったという。
学校建築の場合、これまでは発注者（行政）と受注者（設計・建築業者）の協議で大まかな方向性は業者側に伝えられても、設計自体は設計者の発想や能力にお任せというのが当たり前だった。「こんな学校にしたい」という教委・学校と設計者ががっちりスクラムを組んだ学校づくりが今後、県内で浸透していくかどうか、まさに至民中は格好のモデルと言えそう。明治以来１４０年も続く教育スタイルを、学校建築がどう変えていくのか。福井の野心的な試みが全国へ大きく広がっていくことを期待したい。 （加藤 佳紀）