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社説

阪神大震災15年/記憶風化させずに対策を

2010年01月16日 02:11
 阪神淡路大震災から17日で15年の節目を迎える。死者6434人、負傷者4万3792人。戦後最大の自然災害だった。あの痛ましい出来事はいまだに生々しい。記憶を風化させず、地震の怖さをあらためて思い起こして、一人一人がいざというときに備え、日ごろから対策を心がけておきたい。

 未明に襲った激震は51万戸の家々を、ビルを倒壊させ、高速道路をなぎ倒した。その犠牲者の約9割は住宅や家具の倒壊による圧死だったといわれている。いかに住宅の耐震化が重要かを思い知らされたと言えよう。

 県は耐震診断支援制度を設けている。昭和56年5月31日以前に建てられた木造住宅が対象で、診断は2千~6千円で受けられる。活用件数は平成18年の49件から、19年には一気に446件にも増えている。その年立て続けに能登半島地震(3月)新潟県中越沖地震(7月)が起きたからである。

 しかし、翌年以降はがくんと減っている。隣県など身近な所で地震が起きると不安にかられるが、「のど元過ぎれば」という傾向が顕著に出ていると言えないか。

 とかく、富山は自然災害の少ない県だといわれる。だが日本は世界でも有数の「地震大国」である。県内にも主要活断層帯が複数存在している。油断やあなどりは禁物だ。いつ起きても不思議ではないとの気持ちを持つべきだろう。

 耐震改修工事にも県と市町村合わせて60万円の補助制度があるが、県内住宅総数のうち約37%の13万戸余が耐震性不足だという。地震で壊れた家は住人だけでなく、近隣の人の命も脅かすから怖い。道路をふさいで救助活動や避難に支障をきたすためだ。災害に強いまちづくりを目指したい。

 身の回りのことで忘れてならないのは、室内の家具や大型テレビなども“凶器“となることである。住宅の倒壊を免れたとしても、それらの下敷きになって命を落とすこともある。エアコンや照明といった高所にある家具も意外に見落としがちだ。倒れたり、落ちたりしないために適切な防止策が必要だ。昨年、駿河湾で起きたマグニチュード6・5の地震では、室内に積まれた本などの落下により窒息死するケースもあった。

 日ごろから家族で避難場所を決めたり、さまざまな事態を想定して十分話し合っておくことが大切だ。保存食品やラジオなどを入れた非常用の持ち出し袋を常備しておくことも欠かせない。

 県内各市町村は2月から地震や豪雨などによって孤立する可能性が高い349カ所の集落に対応するため、マニュアル作成を本格化させる。救助要請や避難方法、ライフラインの復旧など県が基本手順を示し、それを基に住民と協議しながら、各集落の実態に即した内容に仕上げる。住民の生命を守るため、しっかりしたマニュアルを作ってほしい。

 小中学校の補強工事も進めねばならない。万が一の場合には住民の避難場所にもなるためだ。県内の平均耐震化率は昨年4月時点で62・7%。県立学校は60・2%と全国平均からみればまだ低い。普段からの準備と行政の積極的な施策で地震に備えたい。

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