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社説
地域主権改革/実現目指す熱意問われる
2010年01月14日 01:11
分権改革がどう進むのか、鳩山政権の本気度が問われる1年となる。まずは18日召集の通常国会である。与党は予算案や政権公約関連法案の審議を優先し、野党側は「政治とカネ」を厳しく追及する構えでいる。夏の参院選をにらんだ駆け引きで大荒れになるともみられ、分権についてどれほど論議が深まるかは不透明だ。しかし、「地域主権」の実現を最重要政策に掲げる鳩山政権であるなら、一歩も二歩も前進させなければならない。
民主党は地方分権ではなく、地域主権の表現を使う。原口一博総務相はその理念について、「主権者である国民が自らの決断で自らの地域をつくること」と述べている。そうであるならば、地方への権限や税財源の思い切った移譲が欠かせない。
試金石となるのは、通常国会に提出される地域主権推進一括法案だ。国が法令で自治体の仕事を縛る義務付けの見直しが柱となっている。ただし、地方が求めた104項目のうち、法案に盛り込まれるのは3分の1程度にとどまりそうで、省庁などの抵抗の壁がいかに厚いかが分かる。それこそ政治主導を大いに発揮すべきだろう。
新年度の予算編成をめぐっては、地方交付税が積み増され、地方の窮状に対する一定の配慮がされた。一方で子ども手当の地方負担が事前の相談なく決まるなど、相変わらずの地方軽視とも受け取れる側面がのぞいた。従来の中央集権型発想から頭を切り替えられるかもポイントになる。
国会の審議と並行して、改革の実行体制をいかに築けるかが重要となる。地域主権を話し合う場として三つの組織が想定され、これをどう生かしていくかである。
一つは鳩山由紀夫首相が議長を務める「地域主権戦略会議」だ。これまで地方分権の旗振り役をしてきた地方分権改革推進委員会が4次にわたる勧告を出して活動を終え、その任務を引き継いだ。勧告は中央省庁や族議員などの抵抗でたびたび骨抜きにされ、地方分権の足取りが遅々としてきた経緯がある。まず、これを繰り返さないことだ。
そのためにも、政府と自治体側が意見調整する「国と地方の協議の場」を重視したい。設置法案が通常国会に提出されることになっており、実現すれば、国と地方が対等な立場で話し合う場が整う。これまでのように、地方側の要望を国が単に聞き置くだけでは済まなくなるはずだ。
「地方行財政検討会議」はさらに中長期的な課題を検討する。地方自治法の抜本改正などがテーマとなる。自治体首長や有識者がメンバーで、県内からも五本幸正富山市議会議長が名を連ねている。
さらにこの夏には、改革の基本指針となる地域主権戦略大綱が策定される。国から地方への「ひも付き補助金」廃止と一括交付金化、国の出先機関の原則廃止などについて基本的な考え方や論点が整理される見込みだ。
地域主権が実行段階となれば、地方の自主性や責任が問われることになるが、まずはそこに至る環境をどう整えるかである。掛け声倒れに終わらせてはならない。