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社説
日本航空再建/公的支援に見合う改革を
2010年01月13日 01:31
日本航空の再建問題がヤマ場を迎えた。政府は法的整理した上で経営再建を図る方針について銀行団の了承を得た。荒療治ではあるが、抜本的に企業体質を改め、一から出直すためにはやむを得ない。日航は近く会社更生法の適用を申請する。取引不安による混乱で運航に支障が出ることがないよう、政府はじめ関係者は万全を期してもらいたい。
日航は平成18年3月に富山―東京便から撤退した。富山空港初のダブルトラック(1路線2社運航)として参入したが、経営不振による不採算路線見直しで、富山での営業はわずか3年半に終わった。県民の日常の足としては縁遠い存在となっている。
しかし、経営再建に巨額の公的資金が使われる以上、県民も無関心でいられない。再建が失敗すれば税金の形で国民負担がさらに増す恐れが強いためだ。
日航や主力取引銀行は私的整理したい意向だったが、“親方日の丸“の体質を長年にわたり改善できなかったことを考えれば、民間による話し合いの決着には限界があったと言うしかない。
法的整理なら裁判所が関与して破綻(はたん)処理することになり、透明性が高まる。8600億円に上るとされる債務超過の改善も、私的整理に比べ厳格に進められるはずだ。
関係者が心配するのは、「倒産」イメージによる信用不安である。これは政府が十分に対策を講じておくしかない。日航の取引先は世界中に及んでおり、燃料代など一般商取引の債権は保護する方針だ。これらを明確にして広く周知しておかねばならない。顧客の不安が広がらないよう、マイレージの保護も同様である。
一方、日航株は100%減資され上場廃止となる公算が大きくなった。きのうの東京株式市場は売り注文が殺到し、ストップ安となった。
米航空会社との提携や航空連合の移籍、国際線の路線削減などまだ片付いていない問題は多い。また、企業再生支援機構の計画では、今後3年間でグループ人員の3割にあたる1万5千人余りを削減する。航空機を飛ばし続けながらの日航再生となるが、いかに安全に飛ばすかという方策もおろそかにしてはいけない。
政府による支援の前提となっている企業年金の減額は、ようやく解決する見込みとなった。実施に必要な3分の2以上の同意が、現役社員に続き、期限のきのうまでに退職者からも得られた。受給者からすれば、正当な権利であり生活設計も狂うとの考えはもちろんあっただろう。ただ、公的資金が年金給付の原資に使われることには、やはり国民の納得は得られまい。これまでの経営陣の責任は大きいにせよ、退職者の同意が必要数に達したことは歓迎したい。
今回の問題が政権交代による成果となるかは、再建の成否にかかっている。公的整理による再建には、一時的にせよ私的整理よりも多額の資金が必要になる。税負担というツケを将来にわたり負わされる可能性はないのか、国民へ丁寧な説明を続けることも欠かせない。