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社説
ビジネスマッチング/県内経済活性化に生かせ
2010年01月12日 01:46
県商工会議所連合会と県商工会連合会が新年度、石川県と福井県の商工団体と連携し、企業の商取引を仲介する商談会「ビジネスマッチング」を初めて開催する。県内経済は回復の兆しが一部見られるものの、依然、売り上げ減などに悩む企業は多い。地域と商工団体の枠を越えた取り組みで、北陸経済を支える中小企業の活力再生につなげたい。
ビジネスマッチングは、企業同士を結びつける「出会いの場」を提供する事業。これまで面識のない企業が商談を通じて新しい販売先や資材調達先などを開拓する。ここ数年、行政や金融機関がこうした商談会を相次いで開いており、マッチング事業は全国各地で活発化している。
日銀金沢支店がまとめた昨年12月の北陸企業短観は、業況判断指数(DI)が全産業でマイナス40となり、前回9月調査に比べて5ポイント上昇した。2期連続の改善である。しかし、DI値は全国平均の同32よりマイナス幅が大きい。設備投資は低水準のままで、雇用関係の数値も依然厳しい。財政出動による政策効果が息切れし、景気の二番底の懸念も残る。そんな経済環境下で、信用保証枠の拡充など中小企業に対する金融支援策も大切だが、そもそも企業には仕事がないことへの不安があり、新たなビジネスチャンスを生み出す商談会には大きな意義があると言えよう。
県商議所連合会などが行う商談会の特徴は二つある。一つは北陸3県の商工団体が初めてスクラムを組むということだ。3県の商議所、商工会の会員企業は約9万社に上る。さらに、北陸はものづくりという似通った産業基盤を持つこともあり、これまでにない数多くの商談が期待できる。
もう一つの特徴は、参加企業のニーズを事前調整し、商談を予約制にして行う「ビジネスドラフト」と呼ばれる手法を採用することだ。具体的には事務局がエントリー企業に参加企業リストを公開し、エントリー企業は商談希望企業を5社まで選んで申し込む。事務局が調整し、双方が合意すれば開催日に商談できる仕組み。参加者が会場で相手先を探して商談に持ち込む従来のケースに比べ、成果が出やすいとされる。県商議所連合会は18年度から同様の商談会を3回行っており、いずれも実績を上げている。
では、商談会をより実効性のあるものにするためにはどうすればいいのか。何より、参加企業が明確な目的を持って臨むことが大切になる。情報収集や販路拡大、技術革新など、企業成長に向けた課題解決の手段として活用できるはずだが、目的がはっきりしないと十分な成果は得られない。さらに、商談会ではさまざまな交渉が行われるが、目先の商取引に加え、新しい商品やサービスを生み出すための企業連携など、将来をにらんだ商談も積極的に進めてほしい。
企業間取引が多様化する中、実際に中小企業が大手企業と商談の機会を得るためのハードルは高く、異業種との取引拡大も欠かせなくなっている。3県商工団体が連携しての商談会を県内経済の活性化に生かさない手はない。