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社説

診療報酬アップ/医療再生への足掛かりに

2010年01月08日 01:56
 新年度の政府予算案で、病院や診療所に支払われる診療報酬が10年ぶりに引き上げられることが決まった。引き上げ率は0・19%で、産科や小児科、救急などの入院医療を担当する病院に重点的に配分される見通しだ。過去のマイナス改定により、県内など地方の公的病院で診療科の休止や医師不足を招いたと指摘されてきただけに、医療再生への第一歩としてほしい。

 診療報酬は公的医療保険を使って病院などを受診した場合に適用される医療行為の公定価格。手術や検査などの内容ごとに細かく点数化されており、1点当たり10円で計算する。患者は医療機関の窓口などで原則3割を負担、残りは加入する医療保険から支払われる。改定はほぼ2年おきに行われている。

 小泉政権時代は社会保障給付費の抑制路線により、過去4回にわたり引き下げられた。鳩山政権は深刻な医師不足などの「医療崩壊」を防ぐため、平成12年度以来、10年ぶりのプラス改定に踏み切った。医師の技術料などに当たる「本体部分」を1・55%増、薬剤・材料費の「薬価」を1・36%減とした。

 救急や産科、小児科、外科は訴訟リスクも高く、人手不足から勤務時間も不規則で長い。その割に賃金など待遇が低く、人手不足に拍車がかかっている。責任が重く過密な労働に見合った収入が得られないとの指摘もあることから、傾斜配分される方向だ。

 県内の医療現場では、プラス改定への期待と不安が相半ばしている。県立中央病院は「収支改善につながる」と評価。一方、医師不足が深刻化し分娩(ぶんべん)の取り扱いを休止している南砺中央病院は「小幅な改定で、あまり恩恵は受けられないだろう」と冷ややかだ。あさひ総合病院は、収入の柱となっている眼科、整形外科の報酬が政府の行政刷新会議で削減の対象とされたことから、収入減につながることを懸念している。

 県内など地方の公的病院は、新卒医師が自由に研修先病院を選べる臨床研修制度導入により医師不足に陥った。医師不足に伴う診療態勢の縮小と診療報酬削減の「ダブルパンチ」は病院経営の悪化を招いた。南砺中央病院の場合は、16診療科すべてで赤字を計上し、事態は深刻だ。

 今回の診療報酬改定は増額になったとは言え、アップ率は小幅だ。医療崩壊を食い止めるには不十分との声は現場にも根強い。報酬配分については、今後、中央社会保険医療協議会(中医協)で具体的に検討することになるが、診療科の間にある収入格差を解消し、産科、小児科などで過密な労働に見合った収入を確保できるようにしてほしい。

 地方の公的病院の経営を改善し、地域医療の基盤を立て直すには、将来的にも診療報酬をアップさせることが必要だ。

 一昨年秋以来の景気後退により税収が落ち込む中、財源確保が課題になる。誰もが安心して医療サービスを受けられる態勢を整えるため、国民負担の在り方を含め幅広く議論していくことが求められる。

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