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社説
藤井財務相辞任/政権運営の未熟さが出た
2010年01月07日 01:15
鳩山内閣がまたぐらりと揺れた。藤井裕久財務相が辞任した。蔵相経験者であり、政権きっての財政通である藤井氏の辞任は、一閣僚が去ることにとどまらない大きな打撃となる。通常国会の政府予算案審議に影響が出るのは必至であり、一刻も早く態勢を立て直す必要がある。
77歳という年齢に加え、健康面の不安は確かにあるのだろう。18日から通常国会が始まれば、補正予算案の財政演説に始まり、予算委員会などで答弁の主役を務めねばならない。長時間の審議に耐えられずに途中辞任となれば、一層迷惑を掛けることになるとの判断があったのは推察できる。
ただし、それだけではなさそうだ。予算編成をめぐり「政治主導になっていない」と非難した小沢一郎幹事長との確執のほか、菅直人副総理・国家戦略担当相との対立が背景にあったとされる。
何より、予算案に対して、財務相として自ら手がけたとの思いを持てなかったのではないか。藤井氏は財政規律の重視を訴え続け、新規国債発行額は「約44兆円以下」となるようにらみを利かしてきた。それでも、一般会計総額は過去最大の92兆円余りに膨らみ、国債発行額についても44兆3千億円と合格点をつけられるか怪しいところまで膨張した。
マニフェスト(政権公約)にかかわる目玉政策の予算付けに関しては小沢幹事長のひと声で決まった側面がある。藤井氏が廃止を明言していたガソリン税などの暫定税率は、実質維持されることになったのが一つの例である。公約関連の予算圧縮についても党主導で決まったと言えるだろう。
予算の要の部分が財務相の手を離れてしまえば、国会答弁で説明責任を尽くすことができるか不安に思ったとしても不思議ではない。嫌気も差したのだろう。首相は「せっかく予算案という子どもを産んでいただいたので、育ててもらいたい」と慰留したが、その気にはなれなかったのが本音ではないか。
藤井氏の辞任は、「内閣への政策決定の一元化」という旗印が揺らいでいることの表れとも言える。鳩山首相のリーダーシップがまだ足りないということである。政権の意思決定の主導権がどこにあるのか不透明では、同様のことが繰り返されかねない。後任には菅氏の起用が決まったが、国会審議には不安を残すことになる。
野党が手ぐすね引くのは予算案の追及ばかりではない。「政治とカネ」の問題もある。鳩山首相自身の偽装献金問題があり、小沢幹事長の政治資金問題もきな臭さが増している。両者とも説明は尽くしたと判断しているのかもしれないが、国民はそう思っていないはずだ。
景気対策や雇用の改善など、本来もっと力を振り向けねばならない課題は山積している。いわば党内のごたごたや議員の身辺にまつわることで国政が滞るとすれば、迷惑を受けるのは国民である。政権交代の熱はもはや冷めつつあるが、一気に冷え切ってしまいかねない。首相はしっかり肝に銘じなければならない。