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社説
エコ先進県へ/住みよい富山引き継ごう
2010年01月04日 01:31
住みよさ日本一-。富山を自慢する際にしばしば使われる言葉だ。海と山に囲まれ自然豊かで、食材にも恵まれた古里である。生物や生態系の多様さが、県民の暮らしを根本から支えている。当たり前の存在として普段意識することは少ないかもしれない。しかし、そんな富山からも貴重な生命が一つまた一つと失われていくとしたらどうだろう。あまり考えたくない話ではあるが、真剣に向き合わねばならない時を迎えている。
生態系の破壊を加速させかねないのが、地球温暖化の進行である。昨年末に開かれた気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)は温暖化防止の国際的な取り組みを話し合う重要な会議だったが、期待された成果を挙げられなかった。メキシコで開かれる今年のCOP16に望みを託すこととなったが、調整は容易ではない。
COP15が失敗に終わったのは、先進国と発展途上国の対立に象徴されるように、「他の国がやらないなら自分もやらない」とのエゴ意識を各国がむき出しにしたためだ。自分だけ損をしたくないとの考えが、世界共通の課題のはずの温暖化防止をかすませてしまった。
「自分たちから始めよう」。この意識が根付かない限り、根深い対立は解消されないはずだ。それを考える材料は富山県にもたくさんある。
県内は平成20年春から、県単位では全国で初めてスーパーやクリーニング店でレジ袋が有料化された。有料化の前、事業者側は消費者の反発や他店に客が流れることを心配したことだろう。しかし、マイバッグ持参は生活習慣としてあっという間に定着した。極めてまれで劇的な出来事と言える。
婦人会や消費者団体の地道な取り組みが実を結んだこともあるが、マイバッグ持参率が9割を超えるのは、一人一人の行動に支えられているからこそである。レジ袋購入をもったいないと思い、ごみ減量化や温暖化防止にも貢献できるとの考えが支えになっている。
今年注目したい取り組みの一つが、富山市が昨年12月から始めた「おいしいとやま食べきり運動」だ。富山の食材を残さず食べきり、廃棄物を減らす取り組みである。焼却するごみが減量化されれば二酸化炭素の排出量削減につながる。
具体的には、食材の適量購入や食材の再調理などを呼び掛ける。小盛りメニュー設定などの協力店も募り、公開していく考えだ。年間約1900万トンもの食料を廃棄している「飽食ニッポン」を問い直す取り組みとなりそうだ。
地産地消も食の在り方を考える材料の一つである。本年度の県政世論調査では、県民の6割が県産の農産物を意識して購入していることが分かった。さらに根付かせていきたい。
今年は生物多様性年に当たる。そこで注目したいのが、近く策定される富山市ファミリーパークの新しい整備計画だ。同パークは動物園であるのはもちろん、近年は竹林伐採による森づくり、呉羽丘陵の活性化に取り組むなど里山再生の中心基地ともなっている。里山の保全は生物の多様性などを考える上で重要だ。どんな将来図が提示されるのか楽しみである。
「♪えんぴつ泣いてる ぼくまだまだ書けるのに 1つ1つの心づかいから 広がる幸せ」。こんな歌が、高岡市で先ごろ開かれたサスティナブルとやま2009・地球にやさしい県民大会で紹介された。「ピカピカの地球」歌詞コンテストで最優秀賞の一つに選ばれた小学生の作品の一節である。鉛筆一本の大切さをかみしめるところから、この広い地球を守っていこうとの心が育っていくのだろう。富山の豊かな生態系を失わないためにも、「心づかい」の気持ちを広げていきたい。