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社説
富山の顔づくり/ブランド力を伸ばしたい
2010年01月03日 01:48
もうすぐ年も改まろうかというころ、富山市中心部を真新しい車両が走り始めた。黒、白、銀色をまとった路面電車「セントラム」は鉄道ファンならずとも注目を集め、鉄路の復権として全国的に関心を呼んでいる。まちなか活性化やコンパクトなまちづくりという市の施策をけん引するとともに、富山を訪れる人にとって魅力的な観光資源の一つになるだろう。このように富山を元気にしてくれる新たな顔が今年もどんどん登場することを期待したい。
市内電車環状線は平成26年度の北陸新幹線開業をにらんだ布石でもある。在来線の高架化により富山ライトレールと結ばれれば、市の玄関口は全く新しい姿を現すことになる。
富山駅周辺に限った話ではない。新幹線開業までに富山のブランドイメージを強め、広く発信したい。せっかく開業しても単なる通過地とならぬよう、地力をつけておきたいものだ。
その点で昨年を振り返ると、試練の1年ではあった。国内全体としても、一昨年秋以来の金融危機が暗い影を落とし、新型インフルエンザの発生が追い打ちをかけて外出を控える動きが広がった。外国人観光客の足も遠のいた。
観光立県を進める富山県も影響は大きかったとみられる。ただその中でも、立山・黒部アルペンルートの入り込み客は2年連続で100万人を超えた。海外客が半減程度にまで落ち込んだが、国内客でカバーした。東海北陸自動車道の全通効果も続き、観光客の数自体は増えた所が相当数ある。これはチャンスととらえたい。あとはいかに宿泊客を増やし、滞在時間を長く取ってもらうか、工夫のしどころである。
国の観光圏認定に県西部の6市が名乗りを上げたのも、滞在型の観光地づくりを目指した動きである。一帯の財産はいろいろ挙げられる。世界遺産の五箇山合掌造り集落、国宝瑞龍寺などを筆頭に、各地に歴史や食が息づき、独特のものづくり文化が存在する。こうした資源の連携活用策を大いに進めてもらいたい。
ひと足早く認定を受けている県東部3市2町の富山湾・黒部峡谷・越中にいかわ観光圏も、国際競争力のある観光地づくりを目指している。昨年夏に運航した黒部と氷見を結ぶ富山湾横断観光船は、天候不順の影響で欠航率が8割近くになったのが残念だった。それでも乗船率は6割近くあったことから、魅力的な素材になり得ることを示した。
船の活用でいえば、富山市の富岩運河を県のソーラー旅客船と市の電力ボートで巡る富岩水上ラインも好評だった。環水公園と中島閘門を結ぶ船旅のルートは、新年度は岩瀬地区まで延伸されるという。富山ライトレールとの組み合わせで、一層魅力的な周遊観光に育ててもらいたい。
小矢部市の新たな顔となったのは道の駅だろう。「メルヘンおやべ」は国土交通省の道の駅と市の地域振興棟が一体的に整備され、地元の農産物や加工品の販売コーナーなどに大勢の人が足を運んでいる。
道の駅はドライバーにとって目印であり貴重な休憩施設であるのはもちろん、地域の観光情報や特産品などの発信基地という側面も大きい。県内の道の駅は計14カ所となり、観光振興や地域づくりの中核施設として、ますます期待を集めそうである。各駅を巡るスタンプラリーなどが行われているが、一層の連携に期待したい。
他県の人に富山の印象を聞けば、立山連峰、薬都、海の幸など答えはさまざまだろう。多くの資源がある。個々に磨きをかけ、それをひっくるめて富山県の丸ごとの印象を強めていきたい。県観光振興戦略プランも近く策定される。一丸となって富山ブランドを育てていきたい。