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社説

新政権2年目/時代切り開く気概持とう

2010年01月01日 02:10
 「世の中の 人はなにとも 言はば言へ 我(わ)がなすことは 我(われ)のみぞ知る」。江戸末期の黒船来航後、混迷の日本を東西奔走(ほんそう)して「薩長同盟」や「大政奉還」をリードし、明治維新に貢献したといわれる坂本竜馬が詠んだ歌である。大意は「人が陰口をたたき、後ろ指をさしたとしても、自分の道を行く」(菊池明『幕末百人一首』)というもので、並々ならぬ気迫に満ちている。

 新年にあたり、幕末の風雲児の歌を取り上げたのは、現状を打破し時代を切り開こうとした青年の心意気を今一度心に刻み込みたいと思ったからである。むろん竜馬が生きた時代と現代は大きく異なろうが、新しい日本の夜明けを迎えようとする気概はいつのときも欠かせない。

 「平成の無血維新を」「日本の歴史を変える」-昨年そう訴えた民主党が総選挙で大勝利を収め、政権交代を成し遂げた。官僚主導から脱却し政治主導を目指す理念に多くの国民が共感した。国民の1票1票が積み重なり、明治以降の近代政治史で初の出来事を達成した。列島は高揚感にあふれた。

 そこには長い自民党政治への失望感があり、旧来の政治ではこの国が立ち行かなくなるとの危機感を持ったからにほかならない。

 巨額に膨れあがった財政赤字、日本の歴史始まって以来の少子高齢化社会の到来、先の見えない不況などこの国が抱える問題は多い。これまでの“政官業“癒着の体質では展望は望むべくもない。将来の世代にツケを回さないためにも、政治のあり方について大きく舵(かじ)を切ろうとしたのである。

 その民主党政権がスタートしてから100日余り。新政権は国民の期待に応えつつあるだろうか。

 「コンクリートから人へ」と公共工事の見直しが打ち出され、血税の無駄遣いを洗い出すために事業仕分けが行われた。これまで「密室」の中でやりとりされてきた予算編成作業を国民の前にオープンにした意義は大きかった。政治が変わったとの実感を持った人も多かろう。新しい息吹は生まれてきている。

 だが、鳩山由紀夫首相は元公設秘書らの偽装献金事件で「政治とカネ」をめぐる責任を問われている。野党時代、秘書が犯した罪については「政治家が罰を受けるべき」と大見得を切っておきながら、「知らなかった」では済まされまい。記者会見での弁明に自民党政権時代の再現を見る思いがした人も少なくないはずだ。首相は説明責任を果たさなければならない。

 政権は米軍普天間飛行場の移設問題でも右往左往し、首相の発言のぶれが混迷に拍車を掛けている。過去最大となった新年度予算案の編成では、国会と選挙に専念するはずの小沢一郎民主党幹事長が存在感を強めた。多くの国民が期待をかけた政権内部で早くもきしみが生じているのではないか。

 「日本の歴史が変わるということに身震いする」と首相は就任会見で述べたが、国民の中にはここまでの政権運営にいらだちやもどかしさを感じている人も多いだろう。今月中に通常国会が始まる。首相の本気度、政権の力量が問われる。注視しなければならない。

 政権交代の影響は県政や経済界にもみられた。長く自民党政権が続いたのだから無理はない。だが、不況風が収まらないのは困る。今春卒業予定の県内高校生の就職内定率は前年同期比で大きく下回っている。鳩山政権はきちんとした経済展望を示してほしい。

 竜馬ら維新の英傑は新たな国づくりに心血を注いだ。そのように鳩山首相は常に軸足をしっかり置いて指導力を発揮しなければならない。八方美人では難局は乗り切れまい。「我がなすことは 我のみぞ知る」。その気迫を持たねばならない。県民も意気込みのほどをしっかり見定めていきたい。

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