たくき よしみつ の 鐸木能光のデジカメ・ガバサク談義 デジタルストレス王

デジタルカメラの隠れた性能・撮像素子面積

撮像素子の大きさは性能と価格に直結

デジタルカメラの撮像素子(CCDやCMOS。銀塩カメラのフィルムに相当する部品)は、1枚の大きな基盤から豆腐のように1枚1枚切り出して使います。ですから、撮像素子の面積はそのままカメラの価格に直結します。
大きな撮像素子なら1画素あたりの受光量も余裕があり、写真の画質も上がります。小さな撮像素子に無理矢理たくさんの画素を詰め込めば、1画素あたりの受光量は減り、どうしても無理が出ます。カメラメーカーはこのことをなかなか公表せず、画素数の多さばかり謳いますが、画素数より大切な要素が「撮像素子面積」です。
例えば、2008年の新製品コンパクトデジカメの多くに採用された1/2.33型CCDのサイズは約6.2mm×4.6mmですが、これは面積にすると35mmフィルム1コマ(36mm×24mm)の3%ほどでしかない小ささです。そこに1000万画素を詰め込んでいます。
35mmフィルム1コマと同じ面積を持つ撮像素子を持つデジカメは、世界でも数えるほどしかなく、価格もかなり高価です。
ちなみに、ニコンがついにフルサイズのデジタル一眼を発表しましたが、画素数は1200万画素に抑えています。1/2.33型の30倍の面積を持つフルサイズCMOSに1200万画素です。1/2.33型CCDと比較すれば、1画素あたりの面積は25倍以上になります。
フィルム1コマも、面積が大きければ受け取るひかりの情報量が増え、画質は上がりました。撮像素子も同じことです。わずかな光を受けて、それを1000万分の1に割って情報を得ることには無理があります。

撮像素子の大きさ比較

撮像素子種類面積比較サイズ(mm)搭載機種例解説
35mmフィルム35mmフィルム36×2435mmフィルムカメラ一般。デジカメではCanonのEOS-1Dsなど35mmフィルムの撮影面面積はこれ。このサイズの撮像素子をもつデジカメを「フルサイズモデル」と呼ぶが、機種は少なく、極めて高価。EOS 1DS、5Dなど
EOS 1D MarkII NEOS 1D MkII28.7×19.1Canon EOS 1D MarkII N35mmフィルムフルサイズより小さく、一般的なAPS-Cより大きい。このサイズの撮像素子に合わせたレンズは存在しないので、従来の35mmフィルム一眼レフ用レンズを使うしかない。見かけの画角は約1.3倍になる(その分、周囲が自動的に切り取られる)。「デジタル専用」設計のレンズは、APS-Cサイズに合わせているため、このカメラでは使えないことに注意。
APS-CAPS-C23.4×16.7APSカメラ(スタンダードサイズ)APSフィルムでスタンダード画像を撮ったときのサイズ。35mmフィルムの約半分の面積。現在、ほとんどのデジタル一眼レフはこのサイズとほぼ同じ撮像素子を持ち「APS-Cサイズ」と呼ばれている。
NIKONサイズ23.7×15.6NIKON D1,D50,D70など 35mmフィルム用レンズをつけると見かけの画角は1.5倍相当になる。
EOS Kissサイズ122.7×15.1Canon EOS Kiss Digital(初代)。EOS 30Dもこれに近い。NIKONよりわずかに小さい。35mmフィルム用レンズをつけると見かけの画角は1.6倍になる。
EOS Kissサイズ222.2×14.8Canon EOS Kiss Digital XなどKiss Digital N、Xは、さらに1回り小さくなった。
SONY R1R121.5×14.4SONY DSC-R1レンズ一体型デジカメとしては極めて特殊な(大きな)撮像素子(CMOS)を持つ。
シグマサイズ20.7×13.8シグマSD10などシグマのデジタル一眼レフは他社より撮像素子が一回り小さい。
フォーサーズフォーサーズ17.3×13.0Olympus E-1、Panasonic L1などオリンパスが提唱しているデジカメ一眼の規格。パナソニックも参加。フォーサーズ用レンズはAPS-Cサイズ用レンズよりさらに焦点距離が短くなるため、背景をぼかすには不利。
2/3インチ型8.8×6.6SONY F707,F717,F828 コニカミノルタA200など一般にはレンズ一体型デジカメでは最も大きなサイズのCCDだが、それでもデジタル一眼の撮像素子サイズとは大きな開きがある。
1/1.8型1.8インチ型6.9×5.2Lumix DMC-FZ30など比較的高級機に使われている。1/2.5型に比べるとかなり大きいが、800万画素を詰め込むのはかなり無理をしているはず。
1/2型6.4×4.8Olympus C2040ZOOMなど2000年くらいからの中堅・高級デジカメによく採用されたが、当時はまだ200万画素時代なので、1画素あたりの受光量は今よりむしろ余裕があった。
1/2.33型6.2×4.62008年発売の小型機のほとんどシャープが開発し、2008年の新モデルのほとんどに採用された。対角7.7mmのCCDに1000万画素を詰め込み、1画素は1.66μm角しかない。
1/2.5型5.7×4.3Pentax Optio X 、Lumix FZ7など2004年くらいからの多くの中堅機種が採用。小さなサイズの中に500万画素以上詰め込んでいる。
1/2.7型5.3×4.0SONY U50などのUシリーズ、Nikon COOLPIX2000など2002〜04年くらいのコンパクトデジカメに多かった。
1/3型1/3型4.8×3.6サンヨー DSC-V1など初期の35万画素クラスのコンパクトデジカメに多かった。

こうして実寸比を図で見ると、撮像素子の大きさがいかに違うものかが一目瞭然です。
2008年現在、コンパクトデジカメによく使われている1/2.33型CCDは、35mmフィルム1コマに対して3%強の面積しかありません。つまり、フルサイズデジタル一眼レフ(CanonのEOS-1Dsなど)の撮像素子に比べると、1/30以下の面積で映像を記録しているわけです。
また、APS-Cサイズと呼ばれる一般のデジタル一眼レフに採用されている撮像素子と、コンパクトデジカメ用CCDとの間には、ものすごい違いがあり、その間を埋めるサイズの撮像素子というのが見あたりません。これも注目すべき点でしょう。
その意味で、SONYのR1がいかに勇気ある開発意図を持って作られていたかも分かります。残念ながら消えてしまいましたが。
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