2月にバンクーバー冬季五輪、6月にサッカーのワールドカップ(W杯)南アフリカ大会開幕、11月には広州(中国)アジア大会と、今年のスポーツカレンダーはにぎやかだ。選手の躍動、ひたむきなプレーはいつも見る者をひきつける。日本中が沸き立つような活躍を期待したい。
国内では昨年、プロ野球とサッカーのJリーグで新たな経営問題が持ち上がった。幅広い支持層を持つプロ野球と、地域に密着したJリーグは、厳しい経済状況に耐える長期的な成長展望を描き出さなければならない。
両者は日本のスポーツ文化の中心的な担い手だ。五輪やW杯など単発の競技会より市民生活との距離が近い。いつの時代も周囲を明るく照らすともしびであってほしい。
日本野球機構(NPB)は毎年約3億円の赤字に陥る危険があるという。各球団から約7千万円の年会費を集めているが、これを増額したい、と球団側に求めた。ドル箱の日本シリーズが最終第7戦にもつれ込み、少しでも多くの収入につながることを祈っているような弱い財務体質では、球界を力強く引っ張ることは到底できない。
各球団は自分さえよければとのエゴを引っ込め、NPBをもり立ててほしい。12球団全体での発展の戦略を編み出す努力が依然、ほとんどみられないのは残念だ。
これだけの厳しい経済状況なのに、大半の球団は選手年俸圧縮の取り組みに熱心ではない。相場を気にし、横目で他球団の動向をうかがいながら、ベテラン選手に2億円も3億円もはずんでいる。年俸は、過ぎ去ったシーズンの活躍に対する報酬ではなく、翌シーズン以降の活躍が確実とみられる場合に実施する投資ととらえるべきだ。
各球団に呼びかけたい。極めて変則的な現行のプレーオフ方式を改善し、日本シリーズ同様にNPBの主催とした上で、試合数を増やすべきだ。そうすればポストシーズンの人気向上と、NPBの財源確保を同時に達成できる可能性が開けてくる。
Jリーグクラブでは昨年、大分が深刻な経営危機に陥り、リーグ機構から6億円もの緊急融資を受けることが決まった。長い伝統を誇る東京ヴェルディも経営につまずき、クラブ消滅をぎりぎりの状態で回避した。いずれも身の丈にあった経営を外れ、選手獲得や年俸に大枚をはたいたのが響いた。
観客増の実現が課題の各クラブにとって、これから目を向けなければならないのは、中高年層をいかにして競技場に迎え入れるかという点だ。若い熱狂的なサポーターが選手に声援を送り続ける中、少し離れたエリアで静かにじっくり試合を楽しみたいと思う熟年ファンは多い。そうした人たちが魅力に感じる環境、サービスがまだ競技場には整っていない。
各クラブのサポーターの年齢はどんどん上がっている。次世代の若者をターゲットにする市場戦略が重要なのは分かるが、孫と一緒にやって来るシニアの支持者を増やす努力がもっとあっていい。一家3世代そろって競技場に足を運ぶ風景はスポーツ文化の象徴だ。
テレビ放映権料とスポンサー収入の減少傾向はまだ続きそうだ。経済低成長、高齢化社会の時代が訪れた中、本物志向の中高年ファンを大切にするスポーツの経営が求められる。
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