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社会展望

2010年1月6日

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そこにある「貧困」知る

 「格差」という言葉が社会に広がってどれほどたつだろうか。いっこうに解消されることなく世の中に横たわった格差のぬかるみから黒い芽を出すかのように、このところよく使われるようになってきたのが「貧困」という言葉である。

 勝ち組、負け組などの相対的、表面的な表現が主だった「格差」と違い、「貧困」にはその日の生活にも事欠くという絶対的な重み、深刻さがある。社会のひずみが、ある部分では行き着くところまできてしまったということであろう。

 政府は昨年10月、初めて「相対的貧困率」を発表した。それによると、全人口の可処分所得中央値の半分に満たない貧困層の割合は、2007年の調査で15・7%。経済協力開発機構(OECD)加盟30カ国で4番目に高い数字だった。

 見逃せないのが、ひとり親世帯の貧困率が54・3%と、極めて高い割合になったことだ。最近では「子どもの貧困」という言葉もよく使われるようになった。十分な教育を受けられないだけでなく、1日3度の食事を食べられなかったり、満足な医療が受けられなかったりする子どもが増えている。

 相対的貧困率は、国民の格差を示す色合いが強く、生活困窮者の割合とイコールではない。だが、もちろん、手をこまぬいたままで経済状況が良くなれば解消するという問題でないことは明らかだ。特にひとり親世帯の貧困は、貧しさが親から子へと引き継がれ、格差が固定化していく悪循環を表している。すぐにでも対策が必要な瀬戸際にあると認識すべきだ。

 警察庁のまとめによると、刑法犯の発生が03年以降全国的に減り続けている中で、昨年はひったくりや万引、強盗が増加した。中でもコンビニを狙った強盗は5割以上の増加だ。この種の強行犯は「不況型犯罪」とも呼ばれ、失業率や貧困率の上昇との関連が指摘されている。

 貧しさは、それが社会の一部分であっても全体に不安を与える。影響を受けるのは平穏な暮らしを求めるすべての人だ。その解消には労働、医療、福祉、税のあり方など、あらゆる分野への目配りが必要となる。

 新しい年に「貧困」の言葉の重みをかみしめ、特に自分は無縁だと思っている人たちが、社会全体の問題ととらえることから始めなければならない。


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