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新たな年に

2010年1月1日

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探そう「幸せのかたち」

 こんな挿話を聞いた。

 マヤ文明の昔、密林に息づいた都市チチェン・イツァ。大地は岩だらけ、その裂け目のようなわずかな耕地で人々はささやかな恵みを求めて雨を慈しみ、祈りをささげて大地に手を付ける許しを請うた。その末裔(まつえい)が今も暮らすという。

 作物は必要な分だけ大地からもらう。実りが少なくてもすべては収穫しない。少しだけ残す。それは鳥の取り分-。雨を降らせ、実りをもたらせ、命を継ぐ。鳥はその願いを天に取り次いでくれるのだから。

   ***

 21世紀となって10年目になる。政治では戦後の仕組みが変わった。6人の首相が入れ替わった中で小泉純一郎元首相は、その中軸だった自民党の古い体質を壊した。そして昨年はついに政権交代が実現した。

 旧来の官僚中心の肥大化した中央集権システム、それゆえの利権。「永田町の論理」が覆される時代がきた。政治への無力感、漂流の不安が解消される期待に胸が躍った年だった。

 しかし、民主党を中心とする新政権は、自らが掲げた過大なマニフェスト(政権公約)にあえぎ、鳩山由紀夫首相は政権運営のバランスを気遣うあまり足元がおぼつかず、指導性を発揮するに至っていない。

 世の中はどうだったか。善良で働き者でさえあれば一家をなして暮らせたはずの安心の社会がうせた。信じられたものが信じられなくなる。暗黙の了解としてあった終身雇用はもとよりなくなり、市場原理という名の競争から格差社会が生まれ、貧困が表れた。

 鳩山政権が当座、政治主導を見せようとしているのは、そうしたひずみ、よどみへの手当て、救済の措置でしかない。世界的な変動の中で日本は今後、何を糧に、どんな産業構造をもって、どう生きていくのか、その成長戦略、その将来設計は、なお見えない。

 かつて右肩上がりの成長はどこまでも約束されたもののようだった。戦後の仕組みの終幕とは、政権交代ばかりではなく、そうした幻影への見極めでもある。黙っていても実現した安心や豊かさ。これからは「右肩下がり」の世の中を生きていかねばならない。

 十分でない果実を前に、それでも幸せを得るにはどうすればいいのか。もちろん政治や行政の役割は大きいが、それのみに頼らない覚悟や知恵、そのための模索も必要ではないか。

   ***

 古代都市イツァは交易の富と豊かさに酔い、自給自足のつましい営みや、自然への畏敬(いけい)を忘れたために崩壊の歴史をたどった。

 私たちも生活のかたちを変えていかねばならないのではないか。自分さえ豊かならばという長い固執から脱したい。自分だけの視座を離れて一人一人が社会とのかかわりを確実に取り戻したい。かつての人々の支え合いやつながり。そうした成熟こそ求めたい。

 私たち自身がどんな社会をつくりたいのか。その思いと政治の成長戦略が呼応して初めて変革の世の中が動きだすのではないか。そこに新しい社会連帯と幸せのかたちこそ学びたい。


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