アフガニスタンとイラクの戦火は止まず、発火しないまでも民族間紛争や国境紛争など危険が予測される地域は世界中に数多く存在している。残念ながら21世紀も平和の実現にはほど遠い現状にある。一昨年来の世界同時不況の中にあって通常兵力の大幅削減を根幹とする「軍縮」への機運が生じないのはなぜなのか。鳩山由紀夫首相は政権発足直後の国際会議で温室効果ガスの25%削減を提案して世界から注目を浴びたが、日本国憲法第9条を堅持するわが国は今こそ、核廃絶とともに包括的な軍縮に向け主導的役割を果たすべきではないのか。
税収不足を踏まえた財源確保から鳩山政権は公開の場で懸命の事業仕分けを行った。防衛予算にもメスをいれたのであろうが、十分であったかは疑問だ。
日本の防衛力の装備で大きく見直すべきものがある。陸上自衛隊だけを見ても戦車は74式と最新鋭の90式とを合わせ900両を超える。ソ連を仮想敵国としていた冷戦時代。その備えとして戦車を保有していたのだろう。しかし、現在も必要だろうか。他国への侵略を想定していないわが国。これだけの戦車を国土内で使用する軍事シナリオには到底無理がある。装備(兵器)は高価であり、いったん、製造してそれで終わりではない。年月を経るに従い更新せねばならず整備は世界的に共通。
プラハ演説で、核の廃絶へ向けた人道的メッセージを発したオバマ米国大統領は、昨年12月10日、スウェーデンでのノーベル平和賞受賞演説で「武力行使で単独行動主義は取らない」と断った上ではあるが「武力行使は不可欠なだけでなく、道徳上も正当化されることもある」と述べたことに失望した。
国民に十分な食料が行き渡っていない国でも兵器を製造して輸出し外貨を稼いでいる国がある。また、欧米の先進国でも兵器を輸出していない国を探す方が困難なほどである。産軍一体の米国で軍縮の主導権を発揮できるかは極めて疑問である。しかし、わが国ならできる。軍縮で生じた予算を十分な食料と清潔な水、医薬品、教育の充実など民生費として発展途上国や紛争地に提供し、治安の安定を図ることは可能。その主導権を普天間飛行場移設問題で米国にクエスチョンを投げかけている鳩山政権に期待したいのである。
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