忙人寸語

財政再建への道筋を示せ 2010年度政府予算案


 鳩山政権が初めて手がけた2010年度政府予算案は、一般会計総額が過去最大となる92兆2992億円。マニフェスト(政権公約)の一部は実施を断念したものの、財源の約半分は国債発行という借金頼みになった。このままでは財政はもたないとの不安も広がる。

 国民の注目を集めた「事業仕分け」を経て政権交代の真価が問われる政府予算案だが、不況の中で税収は37兆3960億円。不足分を補うため、特別会計からの税外収入「埋蔵金」など10兆6002億円を集めても足りず、新規国債発行額は44兆3030億円。当初予算段階から借金が税収を上回るという戦後初の異常事態になった。

 「特別会計を含めた国の総予算207兆円の全面組み替え」「コンクリートから人へ」というマニフェストと鳩山由紀夫首相の理念は、確かに予算案に反映はされた。公共事業費は前年度当初比18・3%減という大幅減少となる一方、介護、医療費に加えて子ども手当の創設などで社会保障費は9・8%増の27兆2686億円に膨らんだ。

 高校も「無償化」になり、子育て支援は手厚い。農家への戸別所得補償制度には5618億円が計上、地方交付税も増額され、地方自治体にも一定の配慮をみせた。

 その結果、10年度末の国と地方の借金を合わせた長期債務残高は、09年度末比37兆円増の862兆円に達する見通しとなった。このうち国債発行残高は637兆円。家計に例えると、年収373万円の家族が443万円の借金をして、1年間に922万円の生活費を使うことになる。過去を含めた借金残高は年収の約17倍で、一般家庭ならば破たん状態だ。

 景気回復が軌道に乗るまで下支えするための財政出動はある程度やむを得ないが、10年度予算案で「埋蔵金」は底をつき、国債発行も危険水域に近づいた。これ以上借金を増やせば国債価格にも影響を及ぼしかねないが、子ども手当の完全実施や高速道路無料化など、今後も国費増加要因がいくつもある。

 国家公務員の人件費や天下り団体の見直しをはじめ、歳出削減を徹底した上で、財政再建をどう進めるか。消費税増税を含め国民負担のあり方など、今夏の参院選前に道筋を示して審判をあおぐべきではないか。

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