忙人寸語

労働者保護へと方向転換 派遣法見直し


 労働者派遣制度の改正を検討してきた労働政策審議会が昨年12月28日、仕事がある時だけ雇用契約を結ぶ登録型派遣や製造業派遣の原則禁止を柱とする報告書をまとめ、長妻昭厚生労働相に答申した。政府は労働者派遣法の改正案を今年の通常国会に提出する方針。同法は規制緩和から労働者保護へと大きく方向転換されることになる。

 しかし報告書は労使双方に配慮した折衷案となったのが実態。公布後3~5年の猶予期間を設けたほか、製造業派遣には長期の雇用契約が見込まれる「常用型」を認める「抜け穴」も用意され、雇用安定化への道筋は不透明なままだ。

 報告書をめぐり労働者側が指摘する問題点の一つは、この「常用型」の定義。厚労省は「契約期間が1年以上見込まれる」と説明しているものの、採用時に「見込み」があっても、いつでも派遣切りは可能と解釈できる余地は残り、あいまいさは否定できない。

 改正法公布後、登録型派遣で5年、製造業派遣で3年とする猶予期間の設定についても、見直し論議がそもそも派遣労働者を早急に救済し、雇用安定化を図る目的で始まったことを思えば、「余りに長すぎないか」との疑問は残る。

 派遣法は1986年の施行時、対象を通訳や秘書など専門性の高い13業務に限定していたが、対象は順次拡大され、99年には原則自由化に。小泉政権下の2004年には製造業派遣も可能とした。

 こうして拡大した非正規雇用を一昨年9月のリーマン・ショックが直撃。派遣切りが横行し、失業と同時に住居すら失う人が続出し、「年越し派遣村」まで出現する深刻な社会問題となった。それから1年が過ぎたが、昨年末から年始に県内でもいくつかの市で、相談窓口開設や宿泊施設提供など就労支援の取り組みが繰り広げられたように、雇用危機は今なお深刻だ。

 問題の抜本解決は、派遣法が激変させた雇用構造そのものを抜本的に是正し、安定した雇用環境の早急な回復にかかっていることは明らか。曲がりなりにも昨年中に報告書がまとまったことは評価したいが、派遣労働をめぐっては正規雇用との賃金格差の解消などまだまだ検討すべき課題は多い。今後も大いに議論していくことが必要だ。

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