NIE(教育に新聞を)実践校の一つ、三朝町本泉の同町立三朝中学校(福嶋千寿子校長)で14日、読売新聞鳥取支局倉吉通信部の三浦康男記者(59)が出前授業をしました。
NIEはNewspaper in Educationの略称。学校や家庭などで新聞を生きた教材として活用してもらう運動で、現代社会を生きていくうえで必要となる情報能力を育ててもらうのが目的です。1930年代にアメリカでスタートし、日本を含む世界60カ国以上で実施されています。
県内では98年に県NIE推進協議会が設立されました。毎日新聞をはじめ、県内に取材活動拠点を持つ新聞社、通信社計10社や県教委などがメンバーです。出前授業もこの運動の一環で、各社がローテーションで記者を派遣しています。
三浦記者は5年前に赴任。倉吉市など県中部エリアを担当し、写真を撮り、記事を書いています。出前授業には1年生の2クラス42人が出席。生徒の質問に三浦記者が答える形式で進められました。
--働いていて大変なことは。
◆(事件や事故などが発生し)休みの日に呼び出された時、「因果な商売だなぁ」と時々思う。
--どのようにして情報を仕入れていますか。
◆役場の情報だけに頼らず、まちの一般の人と交流を深めて、何かあったら情報をもらうようにしている。
--記事を書くうえで気を付けていることや、工夫していることは。
◆淡々と事実だけを書くのではなく、エピソードを織り交ぜ、分かりやすく書くようにしている。
--記事を書くのにどのくらい時間がかかりますか。
◆(小さい)火災や交通事故の記事は5~10分で書くが、(大きい記事など)調べるのに時間を要する記事は1日では書けない。
--記事を書いて良かったと思うことは。
◆書いた記事について、「良かった」と電話があった時、ちょっとうれしいかなぁ。
こうした後、三浦記者は記事を書くうえで基本となる「5W1H」(When=いつ▽Where=どこで▽What=何を▽Who=誰が▽Why=なぜ▽How=どのように)の大切さを強調しました。
インターネットで情報が氾濫(はんらん)し、新聞を巡る環境は激変しています。しかし、インターネットでは、自分が必要とする、興味を持つ情報しかアクセスしないため、偏った情報になりがちです。一方で、新聞は新聞記者が情報の裏付けを取って確認し、見出しの大きさによって記事の重要度を示すため、記事に対する責任の所在が明らかで、価値基準が一目りょう然の、しかも広範な情報に触れることのできるメディアといえます。
このインターネットと新聞の比較は、本を購入する時に似ています。購入する本が決まっている場合、インターネットで注文すれば時間や手間が省けます。しかし、リアル(本物の)書店に行くことによって、思ってもみなかった本を見つけることができるのです。
生活するうえで、社会の情報を共有することがいかに大切であるかを知り、もっと新聞に親しんでもらいたいと願っています。【鳥取支局長・高橋和宏】
毎日新聞 2010年1月18日 地方版