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社説:土地改良費の削減 営農計画狂わす予算だ
年末に示された2010年度政府予算案の農業関連のうち、土地改良事業費は2129億円と前年度比で63%もの大幅な削減となった。夏の参院選を控え、自民党の支持基盤である土地改良事業団体への民主党の揺さぶりという面が強い。農業県である本県にとっては大きな痛手であり、営農計画に狂いが生じる経営体が出る可能性もある。政府は補正予算を組むなどして手当てを考えるべきだ。
土地改良事業のメーンは圃場整備だ。本県の場合、10年度に事業が継続されるのは35地区の計670ヘクタールで、同年度に新たに事業着手する予定が4地区の計200ヘクタールとなる。09年度の土地改良事業費は県全体で154億円で、このうち圃場整備が95億円だ。政府予算案通り予算化されれば、10年度の本県分の事業費は大幅に削減されることになる。関係者にとってはただならぬ事態だ。
圃場整備は農業生産性、効率性の向上はもとより、担い手の育成や耕作放棄地の発生防止など農業・農村を再生させるために不可欠な事業だ。県内では圃場整備を契機に作業の受委託や農地の流動化が進展している。同時に集落単位などによる農業生産法人の設立も相次いでいる。自給率アップのため農地をフル活用するという本県農業の目標実現へ向けた「基盤」となる事業だろう。
農地を所有する農家個々の調整をし、合意に至るまで数年、事業着手から完了までは6年。圃場整備事業はおおむね10年もの歳月を費やす。特に懸念されるのは事業継続中の35地区だろう。予算の大幅削減で事業期間が延びる可能性が十分あるからだ。法人を設立して圃場整備完了を当て込んだ経営体の営農計画にも大きな狂いが生じてしまう。また、事業期間が計画の6年で完了する地区とそれ以上かかる地区では受益者負担などで不公平感が出る。
土地改良事業費の大幅削減は民主党の小沢幹事長らが政府に突き付けた「重点要望」による。削減分を戸別所得補償の財源に回すことも要望しており、鳩山政権はそのまま予算案に反映させた。同じ農業予算でも戸別所得補償はあくまで農家個々を対象としたものである。これに対し、土地改良事業は集落単位など一定のまとまりを要する。予算のやりくりに苦心したのであろうが、やはりちぐはぐな印象が否めない。
参院選の勝利のため、土地改良事業団体へ予算削減という「ムチ」で切り込んだとの指摘は有力だ。確かに自民党とのつながりが深い上、非効率な事業もあっただろう。だからといって、現に進行している圃場整備に大打撃を与えていいというものではない。
政権交代に政策変更は付き物ながら、耐え難い痛みを伴う激変は避けなければならない。このままでは鳩山政権が掲げる「友愛政治」が泣く。
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