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社説:日航、法的整理へ 混乱回避へ最善尽くせ
 もはや対症療法で済む段階ではない。思い切った荒療治、それも多額の公的資金を投入する以上、透明性を確保する形でなければ再生は望めない、ということだろう。
 日本航空の経営再建問題に、ようやく一定の方向性が示された。政府が「法的整理」によって再建することで最終調整に入ったのである。官民出資の企業再生支援機構は再建計画の策定を急ぐ。
 これにより、日本を代表する航空会社は今後、法的整理と支援機構の支援を組み合わせて再建を目指すことになる。運航を継続するには、政府の全面的支援もやむを得ない。
 いまの日航の置かれた状況やこれまでの経緯を考えれば、「法的整理やむなし」と言わざるを得ない。日航は約7500億円の債務超過とみられ、待ったなしの状況下にある。
 再建に向けては公的資金の投入は避けられず、透明性がなければ国民の理解が得られないのは当然のことだ。その点、裁判所が関与すれば透明性が高まるメリットがある。
 ただ法的整理となれば、日航株は紙くず同然になりかねない。加えて多額の債権放棄を求められる主力取引銀行などが「私的整理」を主張してきたことも分からないではないが、もはや私的整理で再建を望める段階は過ぎたのではないか。
 問題は、法的整理に当たって懸念される混乱をいかに回避し、利用者の不安を払拭(ふっしょく)できるかだ。
 金融機関だけでなく、幅広い取引先や株主にも影響が及ぶ。これが法的整理の特徴でもある。関係先が多岐にわたる海外での反応を見通せないことも懸念材料といえる。
 政府は銀行団などとの「事前調整」によって、日航の運航継続と資金繰りに万全を期す方針だ。しかし海外での信用低下が顕在化すれば、何が起きるか分からない。
 この点を不安視する銀行側の指摘はもっともだ。政府と支援機構、日航など関係機関の綿密な調整が欠かせない。
 それ以上に怖いのが顧客離れである。今回、会社更生法が適用される法的整理となれば、一般には「倒産」のイメージが強く、利用者に不安が広がりかねない。現実に、「経営悪化で社員の士気が低下すれば、安全面も心配」といった声が既に出ているのだ。
 いくら法的整理が進んでも、肝心の顧客が激減するようだと再建はおぼつかない。マイレージの保護といった小手先の対策だけでは不十分だろう。
 結局、不採算の国際路線の大幅縮小など根本問題への大胆な切り込み、日航の「親方日の丸」体質の改善に向けた具体策を早急に示すことが、顧客の流出防止につながる。そのためにも、これまで再建方針をめぐって迷走した鳩山政権には、ぶれのない「力強さ」を求めたい。
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