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社説:混迷の経済 早く何とかしなければ
この暗く長いトンネルの出口は一体、いつになったら見つかるのか。大抵の人はそう感じているに違いない。昨今の経済情勢のことである。
物価が下がるデフレは一見、悪いこととは思えない。しかし、下落が企業収益を圧迫。従業員の給料が下がれば消費が減り、物価が一層下がるという悪循環に陥る。この「デフレスパイラル」が恐ろしいのだ。
給料が下がるだけなら、まだしのぎようもある。極めて深刻なのは失業者の増大で、戦後最悪のレベルとの見方もあるくらいだ。大卒、高卒の新規採用を手控える動きが目立っていることにも注意が欠かせない。
日本の経済全体が縮み、景気が再び後退する「二番底」への懸念も依然、根強い。国や自治体、さらには民間も含め、総力を挙げて立ち向かうという認識を共有することが大切だ。
しかし、主導すべき鳩山政権の対応は心もとないと言わざるを得ない。体力が落ちる一方の患者を前に、有効な治療をなかなか施せないでいる医者に例えることもできそうである。
事業仕分けに象徴されるように、無駄というぜい肉はそぎ落とさなければならない。その半面、経済が息も絶え絶えになるようでは元も子もない。
その点、追加経済対策を含む2009年度第2次補正予算案や10年度予算案は十分に実効性を持っているだろうか。どちらもまだ国会審議が残っており、何より緊急課題の割にスピード感に欠けるのが気掛かりだ。
昨年暮れにやっと打ち出した「成長戦略」の基本方針にも不安がつきまとう。急ごしらえのせいか、大まかに見ても問題点が三つ浮かび上がる。
目標を達成するための道筋がほとんど描かれていないのだ。あれもこれもと盛り込んだマニフェスト(政権公約)が修正を迫られたばかりにもかかわらずである。そろそろ現実主義も兼ね備えるべきだ。
成長を生む主体である企業活動をどう活性化させるかという側面も手薄い。家計支援を中心にした需要の拡大で経済を回復させるという手法が、どの程度効果を上げられるのか。
財源の裏付けがないことにも首をかしげざるを得ない。ことし6月までの戦略の肉付け過程では、税財政の見直しがどうしても避けられなくなる。
世界における日本の位置という点にも着目しておく必要がある。米国に次いで世界第2位の経済大国という地位を中国に奪われるのは確実なのである。
世界の経済地図が大きく塗り替わっていく今後、日本はどうやって生き残っていくのか。ダイナミックな発想と周到な戦略・戦術が不可欠となる。
経済の失敗は政権の命取りになりかねない。有権者の目も厳しさを増している。鳩山政権は成果をどれほど積み上げることができるのか。言い訳の利かない試練が待ち受ける。
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