日航再建と花巻空港 県民の総意で活性化を
政権交代に伴う方針転換も影響して、迷走が続いていた日本航空の経営再建問題は、法的整理を前提に企業再生支援機構に支援を求めることになった。日航は、19日に東京地裁に会社更生法の適用を申請、同時に同機構が支援決定する段取りだ。
企業再生支援機構は2009年10月、官民共同出資により5年間を期限として設立された時限的組織だ。日航の再建支援は12年までの3年以内とされている。再建失敗は、日本経済に重大な影響を及ぼす。国民合意を大前提とした支援の環境づくりは、政治の重大な使命といえよう。
日航の債務超過額は8600億円超、再建には公的資金を含めて約1兆円が投入される見通しだ。世界同時不況や新型インフルエンザ流行などの外的要因もあるとはいえ、これまでも度々巨額融資を受けながら、経営の改善は見られなかった。
「親方日の丸」といわれる高コスト体質に、国民の目線は厳しい。今までの支援資金は一体どこに、どう使われたのか。そうした不信を考慮すれば、法的整理により透明性が高まることは望ましい。
問題は、実質的な倒産というイメージがもたらす信用不安と社員の士気の低下だ。政府は支援の声明を用意しているのに加え、就航先の国・地域への説明を尽くす構えだ。支援機構による上場廃止方針が伝えられ、日航株価はストップ安が続くなど、既に投資家離れや顧客離れが際立っている。関連業界のすそ野も広いだけに、政府として早期に具体的な支援の方途を示し、安全な運航が継続できるよう万全を期してほしい。
日航の立て直しは、いや応なしに地方空港にも変革を促す。いわて花巻空港では、今年5月の連休明けにも名古屋線を運休する方針が示され、県は着陸料の減免拡大を決めるなど、自治体や経済関係者は撤回を求めている。
昨年12月、札幌線に導入された小型機の活用など、路線維持へ日航側と交渉の余地は残るとはいえ、諸情勢にかんがみて、少なくとも現状のまま維持することは極めて困難と認識せざるを得ない。
今年12月には東北新幹線が青森市まで延びる。遠くない将来、北海道への延伸も計画され、地域間競争の一層の激化は必至。あらためて、県勢振興に地元空港が果たす使命を再構築する必要がある。
自動車関連産業をはじめ、企業誘致などで産業振興を図る県央部にとって、名古屋線運休のダメージは疑うべくもないが、それを主眼とする訴えが、はたして本県全体を網羅した県民の総意となっているのかどうか。
今や「一県一空港」から地方空港そのものの必要性が問われる時代。人口減社会に突入し、定住人口の増加が見込めない状況では、経済や観光など多方面で交流人口の拡大が望まれる。空港を置くことに、地方が率先して前向きな意義を見いだし、県民の合意形成を図るのも大切な空港活性化策だろう。
遠藤泉(2010.1.16)
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