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ハイチ地震 国際社会の救援を急げ


 カリブ海に浮かぶハイチで大地震が起きた。犠牲者の多くは建物の倒壊で下敷きになったとみられる。死者は最悪の場合、10万人以上という予測もある。時間とともに被害が拡大している。国際社会の救援を急ぎたい。

 活断層がずれたことによる直下型地震とみられる。震源が浅かったため、特に建物被害が顕著だ。深刻なのは、政府や現地の国連施設も大きな被害を受けたため、思うような救援活動を展開できないでいることだ。

 現地からはインフラも壊滅的な打撃を受けたと伝えられている。おびただしい数の国民が被災生活を送っているとみられ、命を救う活動とともに食料や水、テントなどの物資の緊急支援が急務だ。

 貧困が被害を拡大する懸念がある。ハイチは中南米の最貧国の一つ。カリブ海はハリケーンの通り道で毎年のように同国に襲来し、国土やインフラを痛めつけてきた。

 そして、頻発する暴動やクーデターが経済発展を阻害する。国民の多くが1日2ドル以下で生活しているとされ、耐震性のない住居は激しい揺れにひとたまりもなかったに違いない。

 政情不安のため、2004年からは国連平和維持活動(PKO)の国連ハイチ安定化派遣団が駐留しているが、今回の地震では派遣団の本部ビルが倒壊。多くの犠牲が出た。

 地震からの復興も政情の安定があってこそだ。PKO部隊自体が大被害を受けたことは大きな痛手。混乱を増幅させない治安の確保も重要な課題となるだろう。

 今回の地震のマグニチュード(M)は7・0。阪神大震災の7・3よりは小さいが、専門家は震源の深さが約10キロと浅かったため、阪神大震災級のかなり強い揺れがあったとみている。

 浅い震源の直下型地震。極めて似たメカニズムで、17日に発生から15年の節目を迎える阪神大震災をいやでも思い起こさざるを得ない。わが国にとっても決して対岸の火事ではない。

 大震災以来、わが国でも多くの地震が発生し、そのたびに教訓を積み重ねてきた。

 大震災では住宅の耐震化、2004年の新潟県中越地震では活断層の研究の必要性と集落の孤立対策、07年の新潟県中越沖地震では原発の安全性が問われた。08年に起きた岩手・宮城内陸地震では土砂災害のすさまじさが浮き彫りになった。

 この間、災害の経験を経るごとにボランティア文化が進化した。阪神大震災の教訓を学んで被災者の仮設住宅が改善され、生活再建支援は課題を残しながらも法改正が進んだ。地震に対して身構える緊急地震速報も始まった。

 最大の教訓は地震がいつ、どこで起きても不思議ではないということだ。しかし、15年前の阪神大震災でさえ風化が進みつつある。

 災害の記憶を継承し、あらためて自らの問題としてとらえよう。相次ぐ災害から学ぶことは多い。

村井康典(2010.1.15)

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