土地取引で強制捜査 検察は確証があるのか
民主党の小沢一郎幹事長の政治資金団体「陸山会」が行った土地取引問題で、東京地検特捜部は元私設秘書の石川知裕衆院議員=北海道11区=の政治資金規正法違反(不記載)容疑に関連して関係先を一斉に家宅捜索した。
この中には小沢幹事長の東京・赤坂の個人事務所も含まれており、小沢氏本人が取引にどうかかわっていたかが捜査の最大の焦点となる。
公判中の大久保隆規秘書=政治資金規正法違反=が会計責任者を務めた事務引き継ぎ後の取引問題だけに、「検察対小沢氏」対決が最終局面を迎えたともいえる。
検察当局は18日に召集される通常国会を前に強制捜査に踏み切ったわけだが、切り札となる捜査の確証をつかめたかどうか疑わしい。きちんとした捜査結果を出さなければ、国民の批判は逆に当局に向けられるだろう。
一連の「小沢疑惑」への捜査を終了するための型通りの強制捜査とは言えないか。言い過ぎかもしれないが、国会開会を直前に検察は拙速にすぎたのではないか。
確かに小沢氏の釈明はあいまいとの印象を受けた。12日、党本部で行った記者会見で自身の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる問題についても「私も、事務所の者も計算上のミスはあったかもしれないが、意図的に法律に反するような行為はしていないと信じている」と述べ、具体的な資金の流れなどについては「捜査が継続中で弁護士に一任している」として肝心な点は答えなかった。
どこか鳩山首相の個人献金にかかわる疑惑への答えと似ていないか。どちらも、「捜査継続中」を理由にしたが、はっきり疑問に答えた方が小沢幹事長らしかったのではないか。その点、不満が残る。
本県では、談合疑惑で建設業者が窮地に立たされている。先日、県発注工事で談合したとして独占禁止法に基づく排除勧告を受けた91社の業者のうち、12社が公取委に対して最終の異議申し立てをしたが、おそらく審決を覆すことは難しいだろう。
今も疑問だが、公取委の排除勧告と建設業者の談合摘発の時期がほとんど一致しているのは偶然だろうか。捜査当局と公取委の「連携プレー」がなかったか。思い込み捜査がなかったかどうか。誰しも疑問に感じるところだ。
どちらも公正、公平な捜査がなされたと信じたい。しかし、一連の捜査報道を見る限り、当局の報道に対するリークは目に余る。しかも、政治資金規正法とは筋違いの別の疑惑を膨らませている。当局に確証があるのかどうか。
行政、司法、立法の「三権分立」が国の基本なのは言うまでもない。司法はいたずらに世論に頼むのではなく、独立した立場で、厳正な捜査を続けてもらいたい。それを国民は望んでいる。
小沢幹事長も鳩山首相も今「政治とカネ」が問われている。当局の捜査を待つとは言わずに政治家としてきちんとした説明責任を果たすべきだ。
宮沢徳雄(2010.1.14)
論説トップへ戻る
|