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小沢氏聴取へ 丁寧に説明してほしい


 安倍政権下の2007年、現職閣僚に自殺者まで出した事務所費問題で、当時民主党代表だった小沢一郎同党幹事長の資金管理団体「陸山会」が多額の不動産を取得していたことが疑問視された際、同氏は他の政治家に先駆けて記者会見を開き、その内訳や関係書類を公表。予定時間を超えて、記者の質問に受け答えしたものだ。

 当時の閣僚を含め、与党議員の多数も事務所費の不明朗さを指摘されながら、詳細説明の機会はついぞなかったのとは対照的。不動産取得費で小沢氏の団体が飛び抜けて高額であっても、それが自らの説明責任を放棄する理由とはなり得まい。

 当時の不動産購入にかかわって、政治資金規正法の不記載が疑われる問題で、小沢氏は検察の参考人聴取に応じる見込みだ。共同通信の世論調査では、同氏の説明責任を問う声が圧倒的。一度は説明を尽くしたとしても、違法性が疑われるに及んでは責任者として無言ではいられまい。

 小沢氏は自民党時代から、政治資金制度改革を主導してきた。折に触れ、現行規正法の問題点を指摘する立場で、自らの問題で検察と対峙(たいじ)するのは皮肉だが、その「説明責任」を果たすには絶好の機会とも言えよう。検察にはもとより、国民に向けて、より丁寧な説明を期待したい。

 陸山会は04年、都内の土地を約3億4千万円で購入。その資金となった4億円をはじめ、8億円以上の収支を報告書に記載しておらず、検察側は規正法違反の罪で今月中旬にも、当時事務担当だった石川知裕衆院議員を在宅起訴する方向だ。

 石川議員は不記載を認めた上で「小沢先生から現金を受け取り、購入に使った」と供述しているという。その裏付けへ、小沢氏の説明が必要と判断したようだ。

 最大の疑問点は、小沢氏が渡したという現金の原資。この資金は3年後に小沢氏に返されたというが、これも収支報告書に記載がない。

 単なる「不記載」とするには、現金の流れに不可解な部分が多い。西松建設など、業界から多額の違法献金が政界に流れている事実も判明している。道義的に言えば、不明朗を正すのは受け取り側の責任とも言える。

 一方で、西松事件に関する検察捜査は、小沢氏秘書を逮捕するからには、当時の与党自民党側にも手を付けざるを得ないという「バランス論」にとらわれるなど、法の運用に捜査側の裁量が大きく影響する実態を露呈したのは看過できない。

 この面で小沢氏を先頭に民主党が主張する「企業・団体献金の全面禁止」は説得力がある。鳩山由紀夫首相の偽装献金問題もあって、野党自民は徹底追及の構えだが、「政治とカネ」をめぐっては、政治的責任と法改正の議論は分けて考えるべきだろう。

 18日召集の通常国会は荒れ模様だが、与野党は今度こそ国民が納得できる法改正にしのぎを削るべきだ。

遠藤泉(2010.1.12)

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