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三鉄再構築 未来へレールつなごう


 開業から26年の歴史を刻んだ三陸鉄道が、新たな転機を迎える。

 三陸鉄道や県、関係12市町村が国土交通省に申請していた鉄道事業再構築計画が認められ、「公有民営」の上下分離経営が実現した。

 簡単に言えば、従来は三陸鉄道が保有していた鉄道用地を沿線8市町村が無償譲渡を受け、あらためて沿線市町村が三鉄側に貸し付ける。これにより年間約240万円の固定資産税が軽減される。

 さらに、老朽化が進む鉄道施設の設備更新や線路、車両など維持修繕費、人件費などを県と関係市町村が全面負担する仕組みにした。

 国の再構築計画の実施年度は2009〜13年度までの5年間。計画ではこの間に老朽化したトンネルや橋りょうなどの設備更新に約12億円の投資額が見込まれ、3分の1が国庫から補助される。

 こうした経営改善で同社は13年度末までに5カ年トータルで6400万円の黒字転換を目指す。

 沿岸住民百年の悲願が実って1984年に第三セクターとして開業した三陸鉄道は、開業ブームに支えられて初年度は260万人の利用客があったが、2008年度は2度にわたる震度6級地震の風評被害なども重なって約98万人にまで落ち込んだ。

 経営も開業から10年間は黒字だったが、以後は赤字に転落。08年度は1億4500万円の経常損失となった。県や関係市町村は毎年度1億円を超える赤字補てんを行っているが、利用者の低迷に加えて9千万円(09年度)に上る維持修繕費が重くのしかかっている。

 再構築計画で三陸鉄道が身軽になり、経営に専念できる体制が整えられた意味は大きい。同鉄道はこれまでにもさまざまな企画列車の運行やオリジナルグッズの販売などに取り組んでいるが、これからは営業努力で黒字幅を大きくできる可能性もあり、社員の励みにもつながるだろう。

 国土交通省によると、00年度からの10年間に全国で廃止された鉄道は一部廃止を含めて30路線計約635キロに上る。

 30路線のうち6路線は、旧国鉄から経営を引き継いだ神岡鉄道(岐阜、富山)、三木鉄道(兵庫)などの第三セクターで、維持の難しさをあらためて示した。

 三陸沿岸地域は人口減少が続き、高齢化も著しい。三鉄は厳しい経営環境に置かれている。

 だが、だからこそ貴重な住民の足、三陸沿岸地域振興の基盤として鉄道の存在は欠かせない。

 ことし10月には住宅団地がある宮古市山口地区に新駅が誕生。新しい利用客増加に期待がかかる。

 三陸鉄道で元気に働く「鉄道むすめ」の「久慈ありす」と「釜石まな」は今や全国的人気の漫画キャラクターだ。

 地域密着を徹底しながら、全国からもファンを呼び込む工夫と努力を惜しまず、レールを未来へとつないでいきたい。

小笠原裕(2010.1.10)

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