小沢幹事長 ことしも目が離せない
ことしも民主党の小沢一郎幹事長から目が離せない。
鳩山政権の中枢にあって、政治を実質的に動かしている姿は国民の目に明らかだ。これから、わが国をどういう方向に導こうとしているのか。国と地方の「自立」を主唱する政治姿勢に、身近な県民にとっても関心が高い。
東京・深沢で行われた恒例の元日新年会には国会議員166人が出席し、実力者ぶりを見せつけた。担当記者によると、私邸周辺は物々しい警戒ぶりだったという。
右翼の街宣車や在日外国人への地方選挙権付与法案に対する示威運動が展開されていたようだ。外国要人との天皇会見をめぐる官僚発言への批判など、身辺にはテロの危険もささやかれている。
自身が尊敬する原敬首相のような事態が起こらないとも限らない。忌まわしい事件から89年。健全な言論が定着したと信じたいが、わが国を覆う閉塞(へいそく)感や不況を背景に何が起きるか分からない。
言論を暴力で封殺するような時代が再来することはないだろうが、警戒するに越したことはない。民主主義の根幹を成す健全な選挙運動と議会運営、言論を保証することにきちんと心配りしたい。
原敬が目指したのは政党政治、政党内閣の確立だった。暗殺後、自ら率いた政友会は分裂し、やがて軍部の台頭を許す。再び時代の暗転を招くことがあってはならない。
小沢幹事長が民主党代表に就任した4年前にインタビューした。偽メール問題で当時の前原誠司代表が辞任した際の代表選で菅直人元代表を破り、党代表に選ばれた。
印象に残ったのは1年後に迫った参院選にかける並々ならぬ決意だった。代表選を戦った菅氏と鳩山由紀夫幹事長との「トロイカ体制」をいち早く表明して驚かせた。
もう一つは「日本にとっても民主党にとっても残された時間とチャンスはない」という危機感。「平成維新」という言葉を使い、黒船来航から15年たって実現した「明治維新」になぞらえた。その後の参院選、衆院選に勝ち抜いたのは周知の通りである。
編集局長との3日付の新春対談で小沢幹事長は7月の参院選について「過半数」のためには複数区での複数擁立を明言。自らを「野戦指揮官」と称し、衆院選に続く参院選勝利を自身に課した。
当社が加盟する日本世論調査会の参院選に関する投票先調査では民主党が50%を占め、自民党の21%を大きく引き離した。国民の期待感は依然高いことを示す。
この際、小沢幹事長に注文したい。土地取引問題をめぐるさまざまな評判を聞くが、おっくうがらずに説明を丁寧にすること。もう一つは内閣改造があったならば、自身が内閣に入ることだ。さらに言えば、政権の後継者育成にも気配りしてもらいたい。
内閣入りすれば権力の二重構造とか陰の権力者などの批判は当たらないだろう。
仮に鳩山首相の退陣などの事態が起きた場合は首相を目指すべきだ。
宮沢徳雄(2010.1.8)
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