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藤井財務相辞任 予算案審議に万全期せ


 藤井裕久財務相が「体調不良」を理由に辞任を鳩山由紀夫首相に申し入れ、首相はこれを了承した。後任には菅直人副総理兼国家戦略担当相の起用を発表した。

 「平成の高橋是清」と言われた藤井氏は77歳。鳩山内閣の重鎮であるだけでなく、鳩山首相を精神的にも支えてきただけに打撃は大きい。18日召集される通常国会を乗り切れるかどうか。鳩山政権にとって最大の危機を迎えた。

 通常国会は2009年度補正予算案、引き続いて10年度予算案の審議が控えている。二番底を回避するために景気浮揚の両予算案を早期成立させることが鳩山内閣の待ったなしの最優先課題だ。

 後任に決まった菅直人氏は、財務省主導の予算編成をめぐり藤井氏との確執が続いたという。小沢一郎幹事長とともに政府与党一体で難局に取り組む必要がある。

 もともと藤井氏は先の衆院選で引退を表明していたが、民主党の要請で比例代表で当選。鳩山首相の強い意向で財務相に起用された。旧大蔵省出身。細川、羽田両連立内閣で蔵相を務めるなど、円満な人柄と論客ぶりは党内外から評価されていた。原敬内閣で蔵相を務め、後に首相になった高橋是清に例えられた。

 しかし、10年度予算案編成を終えた昨年12月28日から検査と静養を兼ねて都内の病院に入院。年明けの5日も入院先から閣議に出席し、鳩山首相に辞意を伝えていた。

 通常国会の予算委員会は、連日7時間近い審議が行われる長丁場。財務相は予算関連で野党の矢面に立たされる。しかも、国会日程の合間を縫って国際金融会議への出席という重責を併せて考えれば、鳩山首相としても辞任を認めざるを得なかっただろう。

 報道によると藤井氏の辞任には健康面だけでなく、菅副総理や小沢幹事長との予算編成をめぐる権限争いがあったと指摘されている。事実だとすれば由々しき問題だ。

 小沢幹事長が10年度予算編成で党側の要望を伝えた際に「政治主導ができていない」としかり飛ばしたが、これは財務省官僚主導を許した財務相の責任を追及するものだった、と指摘される。

 予算全体をリードするべき立場の菅直人国家戦略担当相との連携や協力もなかったことに藤井氏が嫌気をさしたとも言われる。西松建設の巨額献金事件をめぐる小沢幹事長との溝もあったという。

 真意のほどは明らかでないが、予算の成否は内閣の行方と密接にかかわってくる。通常国会では連立与党が一丸となって影響を最小限にとどめなければならない。鳩山内閣の問題だけでなく、「国民生活第一」がかかっていることを忘れては困る。

 健康上の辞任であるなら何ら後遺症はないだろう。ただし、それ以外の原因や憶測が流れる状況なら、きちんと払しょくする必要がある。

 野党側もいたずらに政局を求めるのではなく、節度ある態度と真摯(しんし)な質疑ができるか国民は見守っている。

宮沢徳雄(2010.1.7)

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