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<新年企画 拓(ひら)く>平泉の再挑戦 県民の熱意を伝えよう


 県民が注目した「平泉の文化遺産」の世界遺産登録延期から1年半。新たな挑戦の年が明けた。

 今月中に正式な推薦書を世界遺産センターに提出。今夏から秋にかけ、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関である国際記念物遺跡会議(イコモス)の現地視察を受ける。

 来年5月ごろにイコモスから勧告が出され、7月ごろに開催される第35回世界遺産委員会で審議を受けて可否が決定する。

 平泉の文化遺産について、前回はイコモスが「登録延期」を勧告。2008年7月にカナダで開催された世界遺産委員会でもその評価を覆すことはできなかった。

 日本が推薦して登録されなかったのは平泉が初のケース。その意味では日本の「名誉」がかかる再挑戦となる。万全を期して世界遺産登録実現に着実に歩を進めたい。

 新しい推薦書は、資産名を前回の「平泉−浄土思想を基調とする文化的景観」から、「平泉−仏国土(浄土)を表す建築・庭園及び考古学的遺跡群」にあらためた。

 また構成資産は中尊寺、毛越寺、観自在王院跡、無量光院跡、金鶏山、柳之御所遺跡の6資産とし、面積は187ヘクタールと前回の9資産551ヘクタールの約3分の1にした。

 登録延期が決まった前回の世界遺産委員会で「庭園のさらなる修復作業が必要」と指摘されたことから、推薦書とともに提出される包括的保存管理計画に中尊寺大池伽藍(がらん)跡と無量光院跡の発掘調査計画を具体的に盛り込んだ。

 特に、新しい推薦書では6世紀に中国・朝鮮半島から仏教思想とともに伝わった寺や庭園が12世紀の平泉で独特の発展を遂げ、後に大きな影響を与えた点を強調しているのも特徴だ。

 いずれもイコモス勧告にできる限り沿った形での内容変更となっている。

 今回の推薦書に盛り込まれなかった平泉町の達谷窟(たっこくのいわや)、奥州市の白鳥舘遺跡と長者ケ原廃寺跡、一関市の骨寺村荘園遺跡の4資産は平泉の登録実現後、追加登録(範囲拡大)を目指すことになる。

 心強いのは、これらの地元で世界遺産登録を目指す熱意が衰えていないことだ。

 年末19日には降りしきる雪の中、一関市厳美町本寺地区住民が骨寺村荘園米を運び、中尊寺に納めた。

 奥州市でも遺跡の案内に地元ガイドの会が活躍。前沢区では史跡を一望できる展望台整備も進んでいる。

 こうした動きをさらに盛り上げ、平泉の世界遺産登録、そして将来の追加登録実現につなげたい。

小笠原裕(2010.1.5)

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