2010年1月10日(日) 東奥日報 社説



■ 八戸前沖さば/全国ブランドを目指そう

 八戸港で主力のイカに次ぐ水揚げ量を誇るサバ。中でも、八戸沖で捕れる脂の乗った旬のサバを「八戸前沖さば」と呼び、新たな地域ブランドとして売り出そうという動きが活発になってきた。

 2008年7月、八戸市内の水産、飲食、観光、行政、大学など各界の関係者が集まり「八戸前沖さばブランド推進協議会」(島守賢会長)が発足。独自のロゴマークを作り、サバ料理コンテストを開き、八戸さば大使や県外PRショップを認定するなど、意欲的な活動を続けている。

 大分の関サバ、長崎の旬(とき)サバ、宮城の金華サバなど、全国ではさまざま名物が知られているが、「口の中でとろけるサバは八戸産だけ」などと、八戸のサバに対する評判も日増しに高まっている。

 協議会を中心に関係者が力を合わせて、八戸前沖さばの魅力を広く発信し、「大間マグロ」に続く全国ブランドの確立を目指してほしい。

 八戸沖の太平洋は、国内で最も北に位置するサバ漁場で、夏から秋にかけての盛漁期には、北海道から南下してくる良質のサバが捕れる。

 協議会は八戸前沖さばを「下北から岩手県南の三陸沖で漁獲され、八戸港に水揚げされたサバ」と定義。その中からサバの脂肪分や漁獲状況を見極め、09年は8月24日から11月30日までに水揚げされたサバを認定した。

 さらに550グラム以上の大型サイズには「八戸前沖さば 銀鯖(ぎんさば)」というプレミアムブランドを与えた。認定された商品にはロゴマークのシールが張られ、「八戸発」を消費者に強くアピールした。

 一方、八戸前沖さばの新品目が登場して、鮮度と味の良さが人気を集めている。「船凍サバ」だ。

 八戸市の福島漁業が08年4月、国の漁船漁業構造改革事業を活用して大中型巻き網の改革型漁船「第83惣宝丸」(329トン)を新造。捕ったサバを船の超低温凍結装置で急速冷凍し、八戸の市場に上場し始めた。

 「サバの生き腐れ」といわれるように、サバは傷みが早いのが難点だ。しかし、船凍サバは鮮魚同様の品質を保ったまま流通させることができ、解凍すれば刺し身でも食べられる。

 希少価値の高さを反映して、昨年12月12日、八戸港第3魚市場で販売された船凍サバは、高値が10キロ当たり2万100円と2万円台を突破。平均単価で鮮魚の約5倍、高値では30倍にも達した。入札に参加した仲買人からは「サバ1匹が2千円か」と驚きの声が漏れたという。

 ただ、船凍サバはまだ始まったばかり。09年に八戸港に水揚げされたサバ約3万7千トンのうち、船凍サバは10トンに満たない。

 そうした中、今月7日に開かれた八戸地域プロジェクト協議会では、改革型漁船の新たな導入計画が提案された。さらに3月には、八戸市館鼻地区で国内最高水準の衛生管理に対応したHACCP(ハサップ)対応型魚市場がいよいよ着工する。

 八戸前沖さばのブランド化へ向けた運動が、「ハマ再生」の大きな弾みとなってほしい。


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