2010年1月8日(金) |
鳩山内閣の支柱である藤井裕久財務大臣が辞任、後任に菅直人副総理兼国家戦略担当相が就任した。 「相当、疲れたということ。医師の判断を尊重したい」と、首相に辞意を伝えた後の会見で藤井氏は意を決し語った。辞意は予算編成の重圧、健康上の理由だろうが、予算審議の始まる18日からの通常国会を前にした、このタイミングでの辞任劇だ。 辞任理由を額面通りに受けとめる向きは少ない。77歳という高齢は事実だが、辞任には、むしろ健康だけではない問題が潜む。 不祥事や失言によらぬ閣僚辞任だ。新年早々、出ばなをくじかれた鳩山首相だが、論戦に強い菅氏登用の即決で急場をしのぐことにより、表向き、政権へのダメージを最小限に抑えた。 漫然と時間を浪費すれば、再び首相の指導力不足が取りざたされたはずだ。 だが、藤井氏の退場は、事実上の小鳩体制への決別の色彩が強いとされる。 藤井氏は民主党きっての財政通だ。国会審議にかける2009年度第2次補正予算案と10年度当初予算案の早期成立は、国民生活の安定と景気向上を目指し、政権浮揚をもくろむ鳩山内閣の最優先課題だ。 それだけに、審議を間近に控えた藤井氏の辞任は、支持率が低下傾向の鳩山政権にとって大きな痛手であり、厳しい試練となる。 予算編成作業は、昨年12月に小沢一郎幹事長が党の重点要望をする場面で「政治主導になっていない」と藤井氏を批判。ガソリン税などの暫定税率問題では、小沢幹事長ら党側がマニフェスト(政権公約)実施は困難として事実上税率維持を求め、税率調整を政府税制調査会に打診していた鳩山首相は受け入れた。 税率問題を検討していた藤井氏は力を発揮できなかった。権勢を前面に押し出し、政府に介入した形の幹事長に嫌気がさし、政権内で最も強い権能を持つはずの鳩山首相が、党内の政治力学から引いた対応をとったことに、不信を抱くとともに失望したとされる。 小沢幹事長と藤井氏は自民党離党後、新生−新進−自由−民主党と長い間、政治行動を共にしてきたが、既に冷めた関係にある。 今回の2人の確執を読めない、あるいは意に介さないふうの首相の姿勢は、個性もあろうが、閣僚が置かれた状況等を洞察する内閣のリーダーとして、今後の政権運営に不安を残した。 首相の求心力低下も懸念されるゆえんだ。 藤井氏後任の菅副総理兼財務相は論客だ。会見では財務省改革と予算編成の抜本改革を進める考えを示した。が、菅氏は、金融経済の政策運営に豊富な経験があるわけでもない。 力量はまさに未知数であり、脱官僚派が「政治主導」をどう、実現していくかが試されることになる。 一方、菅氏の後任で、国家戦略担当相を重任する仙谷由人行政刷新相の負担は大幅に増す。首相が内閣の司令塔とした国家戦略室の位置づけは、この先、どうなるのか。さらなる機能の低下も懸念される。 政権誕生から間もなく4カ月。通常国会は波乱も予想される。新体制となった鳩山丸は、覚悟して国会に臨む必要がある。 |