2010年1月7日(木) 東奥日報 社説



■ 丁寧に情報発信をしよう/ふるさと納税

 十和田市に昨年末、「ふるさと納税をすすめる会」が発足した。年間約10億円の赤字発生が見込まれる十和田市立中央病院を、ふるさと納税制度で支援しようと、市民有志が市外に住む市出身者らに協力を呼び掛ける。

 ふるさと納税は、生まれ故郷など自分が応援したいと考えている県や市町村などに寄付をすると、居住地の個人住民税などが軽減される仕組みだ。2008年5月にスタートし、2年目に入ったが、制度への理解はまだ進んでいない。

 1年目の集計結果を見ると、熱心にPR活動している自治体と消極的な自治体とでは、実績に大きな差が出ているようだ。ふるさとをいつも気に掛けてくれている出身者たちに、分かりやすく、丁寧に情報を発信したい。

 ふるさと納税の「ふるさと」は、生まれ育った地域だけとは限らない。「お世話になった」あるいは「暮らしてみたい」など、これから応援したい「心のふるさと」を選択することができる。

 また、「豊かな自然環境を守ってほしい」「地域活性化のために」など、取り組み・事業を選んで寄付することも可能だ。

 制度スタートから09年4月末までの1年間に、県や県内の市町村に寄せられた寄付は404件で、金額は合計4923万1千円だった。

 県には43件339万7千円の寄付があった。本県出身の企業経営者が100万円を寄付したり、来県中に急病で入院した人の家族が感謝の気持ちを託したケースもあった、という。

 県内市町村の状況を見ると、最も件数が多かったのは三沢市とおいらせ町の36件で、平川市28件、弘前市26件が続いた。

 金額の合計では、八戸市の547万4千円が最多で、次いで平川市438万2千円、外ケ浜町414万円などが多かった。

 ふるさと納税の制度を提唱した福井県は、全国の状況を情報として集約し提供する役割を担う「ふるさと納税情報センター」を運営している。

 そのまとめによると、都道府県別の初年度受付金額上位は(1)栃木県2億2420万円(2)大阪府1億5702万円(3)岡山県1億835万円―だった。

 ただし、栃木県は2億円、大阪府と岡山県は1億円が、それぞれ大口の寄付だったようだ。

 浸透度をはかるには寄付件数を比べるのが適切か。ランキングを見ると、(1)鹿児島県795件(2)大阪府505件(3)福井県472件―がベスト3だ。

 鹿児島県と市町村が一体となって推進協議会を設立し、積極的なPR活動を展開している「かごしま応援寄附金」など、それぞれがきめ細かな取り組みをしている。

 本県も「ふるさと納税広報士検定」を創設したり、イメージキャラクター「ふるさと納税犬」を考案したりと、取り組みに力が入ってきた。

 十和田市によると、ふるさと納税制度で同市に納付された金額は初年度が4件24万円だった。市民有志による「すすめる会」の、今後の意欲的な活動の成果が楽しみだ。


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