2010年1月5日(火) 東奥日報 社説



■ デフレ、雇用対策に期待/国内経済展望

 東証の大発会で2010年の日本経済が動きだした。円高の一服を好感して日経平均株価は昨年来高値更新の滑り出しとなったが、デフレ不況が広がる中で先行きは不透明だ。

 鳩山首相は4日の年頭会見で「二番底回避に全力を挙げたい」と経済運営に強い意欲を表明したが、停滞感は消えそうにない。

 首相は2次補正予算案と10年度予算案の早期成立に、景気回復の期待を込めた。しかし、予算からはその道筋は見えにくい。

 子ども手当や高校授業料の実質無料化など生活重視路線が、家計を通した景気浮揚策と、意気込むが効果のほどは不明だ。予算案全体を見回しても、企業活動の活性化につながる経済政策が乏しい。このままではデフレが長期化し、経済活動が縮小しかねない。

 共同通信社の主要109社景気アンケートでは4割が「景気が一段と悪化し二番底をつける」と景気の悪化を予想している。根底にあるのは円高やデフレによる業績の悪化、企業の先行き警戒感は根強い。経営者の中には、今年後半の景気回復を予測する向きもあるが楽観論はない。

 雇用情勢も懸念される。やや回復基調にあった完全失業率は昨年11月に5.2%と悪化、企業の人員過剰感は依然として消えない。とにかく需要を高め、生産を拡大して、雇用を確保していく政策が早急に求められる。

 政府の経済見通しでは10年度の実質成長率は前年度比1.4%で3年ぶりのプラス成長とみているが、民間の予想では厳しい数字が並ぶ。完全失業率は5%前半で推移し、デフレが続くと予想している。

 このままでいけはGDPのプラス成長にもかかわらず、国内景気の減速が強まりそうである。賃金下落、雇用不安の中で、個人消費が冷え込み、国民生活は悪化しそうな状況だ。

 経済不況がこれだけ深刻化しているのに諸外国に比べて鳩山政権には経済立て直しへの成長戦略がない、と批判されたこともあって政府は年末に新成長戦略の基本方針を発表した。

 2020年度の名目GDPの目標を650兆円とし、名目で3%、実質で2%を上回る成長を見込む。重点目標は環境、エネルギー、健康、観光、アジアなどを挙げている。6月をめどに最終的な具体策をまとめるというが、どこまで実現可能なのだろうか。

 自民政権下でも数々の成長戦略がまとめられてきたが、成功したとは言い難い。失敗の根底にあるのはいつも政治のリーダーシップ不足だった。

 今こそ政権交代での政治の力が求められている。鳩山政権は国民の見る目の厳しさを認識するべきだ。ここは中身の伴った政策実行で信頼を得るしかない。

 経済成長には外需の拡大も大事だ。内需喚起にもう少し時間がかかりそうな現在、中国をはじめとしたアジアへの輸出が一番の期待だ。各国の需要を見極め、政府と産業界が連携して輸出戦略を推進していくことが望まれる。

 政府は内需外需の両面から成長戦略を具体化し、まずデフレ脱却、雇用対策に本腰を入れて取り組んでもらいたい。


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