2010年1月4日(月) |
東北新幹線が今年12月、青森市に到着し、全線開業を果たす。 新青森駅(石江地区)と七戸十和田駅の完成を経て達成され、一番列車は乗り換えなしで3時間20分。翌春に最新鋭車両「E5系」が登場、13年3月には3時間5分に短縮される。 本県にとっては、文字通り新時代の到来だ。年が明け、その足音が一歩一歩着実に近づいている。 1891(明治24)年の日本鉄道全通 上野−青森間26時間半−を控えた前年、「日本新聞」の社長兼主筆、陸羯南(弘前出身)が本紙に「鉄道敷設後の陸奥國」(社説)を寄稿、その利益と「生産と消費の不釣り合い」という弊害に注意を乞う、と論じて110年。 平成の新幹線全通は何をもたらすのか。一つは自然や文化、食材などのあふれる観光資源を生かした経済効果、二つは短い時間で結ぶ人の交流である。青森でのビジネスや人との再会と出会い、本県からの首都圏や各地への旅でもある。 失うものはどうだろう。あるいは法人・事業所の仙台、盛岡など県外移転か。コスト削減から本県が出張圏になる可能性もあろう。 20世紀、本県が産業構造の高度化を実現しえないうちに、日本は脱工業化社会に入った。21世紀は環境、農業など多様な成長の糧を探す時代、イノベーションを促進する時代にもなる。 が、この間、食を含めた豊かさという物差しでみれば、本県の生活水準は低いとはいえないが、県民所得は依然、全国最下位クラスに甘んじてきた。若者の働く場がないという切実な現実は、改善されず絶えることがない。雇用はいつも難題であり続けている。 そうしたなか、東北新幹線を本県に元気をもたらす大きな機会としたい。そのためにも、縄文の古里である青森の魅力、売りをもっと磨いていく必要がある。 磨くことは発信すること。埋もれた土地の特性や美点を吸い上げ、もっと前に出し光らせることでもある。18世紀の後半、江戸時代の紀行家・菅江真澄がたどった本県だ。当時の姿や自然を写実し、後世に残した旅日記は一段と輝こう。 本紙新年号で金融経済界からは「あの人に会って話を聞きたいも、一つの商品価値」「新幹線効果は享受ではなく創出すること」「企業活動にどう活用するかだ」の指摘があった。 各自治体は住民とともに「私たちの売りは何か」に知恵を働かせ、工夫によって雇用につなげてほしい。 迫る新しい風は、魅力再発見への意識改革を求めてもいる。JR東日本の見並陽一常務取締役は「本県最大の観光資源は十和田湖。八戸ルートが中心だが、弘前、黒石から入る新観光ルートができる。人の流動が起こる」と語っている。 鉄道事業者ならではの卓越の見であり、二次交通整備に生かすべき視点だ。地域は新幹線によって、変わるものも見定めるべきだ。 巨費を注ぎ込んだこの約40年に及んだ、官民、政治家による「東北新幹線は日本列島の背骨。幹線であり、全線開通が筋道」との訴えと叫びを、新年にあらためてかみしめたい。 県民には、この好機を引き込み、しっかりつかみ取ることが求められている。 |