2010年1月3日(日) |
沖縄・宜野湾市にある米軍普天間飛行場の移設問題は、日米同盟にきしみを生じ決着が見通せないまま越年した。 鳩山由紀夫首相は「日米同盟が日本外交の基軸」と強調する。だが、普天間問題に関する首相の発言は迷走を続け、米側に不必要ともいえる不信と警戒感を与えてきたといえる。 昨年の衆院選で、民主党は念願の政権交代を果たした。党代表である鳩山首相が、自民党政権下の外交を「対米追随」と規定。そこから脱却し、中国などアジア外交に新たな可能性を見いだそうとする意図は、理解できないわけでない。 しかし、日本が基地を提供する代わり、米国が平時の抑止力となり有事には日本を守る日米同盟は、日本の繁栄を支えてきた。その同盟の根幹にかかわることについて、相互不信を生んでは日米関係全体に悪影響が及ぶことになる。 新政権が旧政権の政策を見直し検証するのは当然であるが、旧政権が結んだ外交上の合意は政権が代わっても相手側の意思に十分に配慮し、守っていく努力を続けることが必要だ。 日米同盟は、わが国がアジア外交を展開するうえで重要な基盤。首相が提唱している「東アジア共同体」構想も米国抜きには語れない。環境、エネルギー問題など諸懸案解決のためにも安定した日米関係が肝要である。首相と連立3党はこのことを忘れてはいまい。 普天間飛行場の返還と沖縄県内への移設に日米が合意したのは1996年。在日米軍の再編で、海兵隊員8千人のグアム移転、普天間飛行場を名護市辺野古のキャンプ・シュワブ沿岸部に移設することなどを決めたのは、2006年のことである。 沖縄の事情に精通した日米の担当者らが長年にわたって検討、さまざまな条件を満たしたのが辺野古への移転だったといわれる。 この問題に関する首相の真意が現行の日米合意案にあるのか、それとも国内・国外を含めて辺野古以外への移設なのか、必ずしも判然としていないもどかしさがある。 与党3党は1月中に移設先の具体案を提示する方針で一致。首相は「米国の意向を無視した与党合意はあり得ない」と述べている。 日米合意案に代わる新たな移設先の選定は、容易なことではない。一方で沖縄では、県外や国外移設への期待が急速に拡大しているとされる。在日米軍基地の7割強が集中する沖縄としては当然の反応だろう。 今月24日の名護市長選で移設容認姿勢の現職が敗れ反対派が当選すれば、米国が履行を迫ってきた現行案が頓挫する可能性は否定できない。国外移設などもできず、普天間基地が現状のまま残る恐れもある。 日米安全保障条約は今年改定50年を迎える。首相は「新しい日米関係を築く」意欲を示し、オバマ政権は日米同盟を「アジア外交の礎石」と位置づけている。 オバマ大統領に「私を信じて」と言った首相は、普天間問題に決着をつけられない状態が続いている。与党内調整が困難とみられる中で首相は5月までに最終合意を目指す考えのようだが、近いうちに重大な決断を迫られるのではないか。 |