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【蹴球探訪】

<南アW杯企画>国際主審・西村雄一氏が岡田ジャパンに提言

2009年8月6日

Jリーグで笛を吹く西村雄一・国際審判

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 来年6月開幕のワールドカップ(W杯)南アフリカ大会で主審を務めるレフェリーの選考と研修を兼ねた国際サッカー連盟(FIFA)の「エリートセミナー3」が6月、首都プレトリアで行われ、日本からは西村雄一国際主審(37)が参加した。現地の試合会場は標高1300−1800メートルで、空気も乾燥しているなど日本代表にとっても未体験の環境が広がる。現地を激走した西村主審にセミナーの詳細、日本代表へのアドバイスなどを聞いた。 (聞き手・上條憲也)

『エリートセミナー3』に参加

 −セミナーには、1年後に開幕するW杯を目指す主審候補38人が参加したが、その内容は

 西村「フィジカルフィットネステスト、ルールテスト、コミュニケーションテストと、レフェリー心理に関するグループディスカスとエナジーパフォーマンス講座。『エナジー』を日本語に訳すと『気』ということです。マーシャルアーツ(武術)の専門家がレフェリーインストラクターにいて、集中やリラックスなどを教わります」

 −フィットネステストの形式は

 「まず40メートルを6・2秒以内に走る。これを6本。やり方は40メートルを走り、1分30秒後に2本目、同様に6本。7分休んだ後、400メートルトラックでインターバル走を行います。150メートルを30秒で走り50メートルを35秒で歩く。これを2回で1周。同様に12周します。テストは現地に入って4日目の6月4日午前中に行いました。標高(に慣れる)だけでなく世界中からレフェリーが集まるため時差調整も必要になります」

 −では、テストまでの3日間は

 「FIFAの指導によるレフェリートレーニングで、地元選手に協力してもらったファウル判定の反復練習です。例えば1対1のドリブルでゴールに向かう状況下、ペナルティーエリアラインぎりぎりでファウルというプレーを、審判はハーフウエーラインより遠くから走り出して判定します。CKやFKの状況ではゴール前の攻防やファウルを正しく判定できるか。この時、主審はセンターサークルを周回してゴール前へ全力で走り、着くや否やのファウルを判定します。それをピッチ脇のビデオモニターで確認します」

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すぐに息が上がる

 −主審は1試合で10−12キロを走るというが、プレトリアは標高約1300メートルの高地。それだけ激走した感想は

 「トレーニングやフィジカルテストは心拍計を装着しています。過去のセミナー時と比べて心拍数値が10ほど高い値が記録されていました。標高の影響か空気の乾燥か、環境面によって心拍数に負荷がかかったと言えると思います。慣れるまでの時間と訓練が必要だと思います。具体的な自覚症状はすぐ息が上がること。体が重くなるとか動きにくいということはなかったです」

 −ほかの審判は

 「イタリアのロゼッティ主審と話したのですが『もしW杯に来られるなら事前に高地トレーニングをしないと』と。メキシコのアルチュンディア主審はもともと標高の高い所から来ているのであまり感じなかったようです。乾燥も原因の一つかもしれません。日本と比べかなり乾燥しています。例えば何もケアをしないと夕方には唇がカサカサになりました。リップクリームは必需品です。それから現地では除草作業の野焼きをしていて、至るところで煙が上がっていました。未舗装の赤土の道もあり、車に巻き上げられる土ぼこりはすさまじかったです。春先は花粉症に悩まされるのですが、反応する花粉はないのに症状が出て鼻が効かなくなりました。空気の影響もあるかもしれません」

 −W杯を戦う日本代表への助言は

 「標高の影響は個人差があると思います。日本選手は標高だけでなく、乾燥や気温差も大きく影響すると思います。昼間は20度くらいで夕方は5度以下。昼は半袖で夜は防寒対策が必要です。日本ではなかなか経験できない環境なので事前準備が必要だと思います」

54人→38人→24人

 2月の「セミナー1」で54人だった候補は「3」までに38人に絞られている。来年2月ごろには最終的な24人程度のW杯主審が決まる。もちろん西村氏が選ばれる可能性もある。

 「W杯レフェリーに選ばれることはとても難しいことで、実力はもちろんタイミングや運も必要です。とても狙っていけるものではありません。選ばれるために努力をするのではなく、次に担当する試合をきっちりコントロールする。その積み重ねが大切だと思っています」

高地に慣れるのは平均1週間

 高地の影響について、東京・西が丘の国立スポーツ科学センター(JISS)の鈴木康弘氏は「持久力を示す最大酸素摂取量(VO2max)が標高1000メートルで5〜10%程度、1500メートルで10%以上低下するといわれる。数値が高い人の方が低下率も大きい。つまり走れる人ほど駄目になりやすい」と説明する。

 高地に慣れるために必要なのは平均1週間。個人差はあるが事前対策で軽減可能だ。03年の女子W杯予選プレーオフで、なでしこジャパンは2000メートル超のメキシコとのアウェー戦で高山病にかかる選手が続出。経験を生かし、07年の同プレーオフで再戦前にはメキシコ入り直前にJISSの低酸素室を利用してリスクを軽減した。

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