黒ずくめの服装に長い髪、そして無表情。そのスタイルから「アングラ歌手の女王」の異名をとった浅川さんが、ホテルの一室で突然、死を迎えた。
浅川さんは15日から名古屋市中区のホテルに滞在し、ライブハウス「ジャズインラブリー」で3日連続公演を開催中。この日は最終日のステージを控えていたが、午後7時半の開演直前になっても姿を見せなかった。
同店のスタッフに依頼を受けたホテル従業員が、浴室で倒れていたところ発見。浴槽の湯に顔の右半分をつけて意識を失っており、従業員は慌てて午後7時46分に119番通報。浅川さんは心肺停止状態で名古屋市内の病院に搬送されたが、8時に急性心不全による死亡が確認された。
前夜まで体調不良の気配はなかった。15日から2日間で、50分のステージを2回開催。16日には店内で共演者、スタッフと食事をとり、深夜0時にはホテルへ戻った。だが、翌朝から音信不通に。同店関係者は「初日は新幹線移動があったので『疲れた』と話してましたが、2日目のステージは素晴らしかった。体調が悪いようには見えませんでした」と振り返る。
1968年に寺山修司さんが演出する新宿「蠍座」の一人舞台で注目を集め、歌手デビューのきっかけをつかんだ浅川さん。「アングラ」と呼ばれた前衛的表現の代表的担い手として、団塊世代を中心に支持された。
近年は新宿のライブハウス「ピットイン」を拠点に活動。昨年12月26日から30日まで「浅川マキ大みそか公演」と銘打ち、同所でライブ出演していた。プライベートでは結婚しておらず、都内のマンションに一人暮らし。愛知県警によると、持病は特になく、遺体は親族に引き渡されるという。葬儀・告別式の日取り、喪主は未定。
浅川さんの亡くなる約9時間前には、日本ハム1軍投手コーチの小林繁氏(享年57)も突然死。度重なる訃報が同じ時代を生きた団塊世代に衝撃を与えた。