阪神大震災から、きょう17日で15年。地震国日本では大地震はいつでも、どこでも起こる。県内にも活断層はあり、安心はできない。大震災の教訓が生かされ、県内でも建築物の耐震化や自主防災組織の結成が進み、災害ボランティアセンターも設置された。だが、いざ災害が起きたときは「自分の命は自らが守る」という意識を持ちたい。
阪神大震災は警戒空白地域の断層が震源地だった。2005年の福岡県西方沖地震も空白地域だった。未知の断層で大地震が起きるのは、日本が世界有数の地震国だからである。県内にも「川久保断層」(佐賀市、神埼市)などいくつかの断層が存在し、油断はできない。地震の備えは万全でありたい。
阪神大震災以後、建築物の耐震化が進んだ。阪神大震災では1981年以前の旧耐震基準の建物に被害が大きかった。これを教訓に国は法律を改正し、住宅と一定規模以上の学校、病院、百貨店などの耐震化率を高める目標を設定した。消防庁によると庁舎、学校、病院など防災拠点となる公共施設の県内の耐震化率は60・5%(08年度末、全国65・8%)で全国29位。県は15年度までに90%(用途により100%)まで引き上げる目標を定め、改修を進める方針だ。できれば前倒しで目標を達成したい。
個人住宅の改修も遅れており、県内の住宅耐震化率は67・8%(08年度末)にとどまっている。佐賀市など6市町が耐震診断費補助制度を創設しているが利用は少ない。地震が少なく改修費の大きさもあって耐震化への意識が低いことが挙げられる。行政はもっと啓発を進めてほしい。
阪神大震災で、住民による自主防災組織の重要性が指摘された。県内の組織率は56%(09年10月)で、愛知など100%近い県があることからすれば取り組みが遅れている。この組織は小さな行政単位ごとにつくり、市町村長が認定。住民自らが防災意識の徹底や知識の普及に取り組み、地域行事などを通じて避難、消火、炊き出しなどの訓練を行う。全国トップの消防団組織率の高さや災害の少なさなどから必要性の認識がまだ薄い。行政が自治会と連携し、積極的に地域の中でコミュニティーの大切さを訴え、組織化を進めていきたい。
阪神大震災では全国から130万人を超える人々が支援に駆けつけ、ボランティアの役割が再認識された。県内でも年に県社会福祉協議会が各種団体に呼び掛け、県民災害ボランティアセンターを発足させた。会員として約2千人が個人登録している。これまでも06年の台風13号に伴う伊万里・唐津集中豪雨災害や、昨年7月の北部九州・中国豪雨災害などにボランティアを派遣した。20代の若手が少ないのが悩みだが、大学や短大などにもっとアピールしていく必要があるだろう。
行政の「公助」、ボランティアの「共助」だけでなく、自らの命は自分で守るという「自助」は最も大切だ。耐震補強に加え、家具の固定や、ふだんから近隣の人とコミュニケーションをとるなどできることから始めたい。建築、防災の専門家や行政担当者は、一般市民が対策に一歩踏み出せるよう知識を伝え、背中を押してもらいたい。(横尾章)
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