地方議会の議員共済が破たんの危機に直面している。特に市議共済会と町村議共済会は「平成の大合併」で受給者が倍増したり、共済制度を支える現役議員が減少し、既に積立金を取り崩して財政を維持している状態だ。給付率の低下や議員掛け金の増額は当然としても、さらなる公費負担増は、そう簡単に市民の理解を得られるとは思えない。
町村議共済会の窮迫ぶりは佐賀県内の数字を見るだけでもよく分かる。現在、現職町議は141人で、掛け金は標準月額報酬の16%。同16・5%の自治体負担分を含む本年度の共済会への納付額は約1億3200万円。これに対し年金受給者は遺族140人を含む317人で、総額は1億9900万円に上る。
全国の町村議、市議共済会は、佐賀の数字をそのまま膨らませた状態だ。特に市議共済会は「平成の大合併」の影響が大きかった。現役議員は01年度末の1万9315人から07年度末には2万2142人に増加。受給者はさらに急増し、3万207人から6万3349人になった。議員1人で年金受給者3人近くを背負う状態となっている。
国は06年度に市議共済会と町村議共済会の財政単位を一元化し、一体的に運営。翌年度からは受給金額を引き下げ、議員の掛け金率とともに合併影響の激変緩和のための特例負担金を含め公費負担金率を引き上げた。
だが「焼け石に水」も同然で、市議共済会だけでもピーク時の1998年度には1270億円あった積立金は毎年の取り崩しや町村議共済会への拠出もあり、11年度中には底をつくと予想される。
財政悪化を受け、総務省は昨年3月、地方議員年金制度を抜本的に見直すための検討会を設置。年末までに結論を得ることにしていたが、報告書に制度廃止案と存続2案を併記するにとどまった。
存続2案は公費負担増が大前提で、全国町村議会議長会が唯一「条件付きで受け入れ可能である」とした改正B案は、公費負担割合が10年以上にわたって57・4%(現在約47%)になるものだ。
地方議会の役割、重要度が高まる中、地方議員が議会活動に専念するためには退職後の生活を一定保障する互助制度は不可欠、とする存続派の主張は理解できる。法律が一緒のため、現段階では切羽詰まっていない都道府県議共済会も市議共済会などと同じ選択を迫られる。廃止した場合、既に受給したり、これから受給が決まっている人への給付金すべてを公費で賄うと総費用は1兆3300億円になるという試算もある。
それでも制度存続を、とは言いかねる。議員の掛け金が主体ではあるが、公費が下支えしている。在職12年以上、60歳以上の市議退職者には平均約102万円、町村議には同68万円の年金が亡くなるまで(遺族年金は半額)給付される。もちろん、公的年金とは別口であり、市民の目には「特権的な制度」と映る。
共済会への自治体掛け金の一部を上乗せする形で個人年金に切り替えたり、在職12年未満の退職議員と同じように「退職一時金」にする方法も含め、ありとあらゆることを論議する時期ではある。そして、それはガラス張りであるべきだ。事情は異なるが、国会議員年金は06年度、廃止になっている。(横尾 哲)
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