石川議員ら逮捕 小沢氏は強弁より説明を

 小沢一郎民主党幹事長の資金管理団体「陸山会」の土地購入をめぐる政治資金規正法違反事件で、東京地検特捜部は衆院議員石川知裕容疑者をはじめ小沢氏の元秘書ら3人を逮捕した。
 昨年3月に特捜部が強制捜査に着手した西松建設の巨額献金事件は小沢氏の民主党代表辞任につながった。それ以来ひきずる小沢氏への疑惑は、通常国会開会直前の現職議員逮捕という重大な局面を迎えた。
 小沢氏は16日の民主党大会で事件について語り、あらためて検察との全面対決姿勢を明確にした。
 国民が求めてきたのは、疑惑に回答する小沢氏自身の詳しい説明である。捜査手法への批判や怨念(おんねん)の言葉では国民の疑問に答えることはできない。
 特捜部が要請した任意での事情聴取に小沢氏は応じてこなかった。石川容疑者もあいまいな供述を繰り返したとされる。その上、逮捕当日は任意聴取を拒んだため、外出先から任意同行の上で逮捕された。
 小沢氏側には、自ら進んで疑惑を晴らそうという意思が欠けていたとしか見えない。
 国会や民主党大会目前というタイミングでの逮捕に小沢氏は反発しているが、検察にとっても大きな決断だったはずだ。小沢氏側の非協力の姿勢がかえって一連の強制捜査を後押ししたかにも映る。
 「法令に反したことはない」と胸を張るのなら、なぜそう言えるのかの理由を堂々と述べればいい。黙っていたり怒って見せたりするだけでは、理解は得られない。
 小沢氏は党大会で土地購入資金の出所について「積み立てた個人の金」とした。不正な資金でない証しをきちんと示してほしい。これだけでは言葉が足りな過ぎる。
 「(政治資金収支報告書の)修正や訂正で許されてきたものが、今回は最初から逮捕、強制捜査であり納得できない」とも述べた。
 収支報告書への不記載や虚偽記載は罰則に禁固刑もある犯罪だ。自らの「政治とカネ」を常に問題視し、規正法を強化してきた政治の側が言うべきことではない。
 鳩山由紀夫首相は「小沢幹事長を信じている」とし、幹事長続投を支持した。捜査の進展と国会審議の行方が見通せない中、信じて推移を見守るだけでいいのか。
 首相と小沢氏の献金問題で、民主党内の議員の対応は腫れ物に触るかのようだった。言うべきは言う、けじめをつけるべきはつける姿勢が必要だ。
 夏には民主党政権の行方を占う参院選がある。この問題にどう対応するかは政権交代の真価も問う。

新潟日報2010年1月17日

阪神大震災15年 教訓生かし耐震化急ごう

 一瞬のうちに都市を廃虚に変え、6434人もの命を奪った阪神大震災から、きょう17日で15年になる。
 神戸市をはじめ被災地住民の復興への努力に敬意を払うとともに、あらためて犠牲者の冥福を祈りたい。
 ただ、阪神後も悲劇は繰り返されている。国内では本県の中越、中越沖の二つの地震のほか、能登半島、岩手・宮城など多くの地が震災に見舞われ、甚大な被害を受けた。
 海外に目を転じれば中国の四川省、インドネシアのジャワ島、南太平洋のサモア、そして、12日にカリブ海の島国ハイチで発生した大地震と枚挙にいとまがない。
 地震でどれだけ多くの人命が奪われ、財産を失ってきたか。地球上に住む宿命とはいえ、大地震の前には人類の英知もかすんで見える。
 阪神大震災で被害を大きくしたのが、住宅をはじめとする建物の耐震性の不備だった。
 以来、地震に強い都市づくりが叫ばれて久しい。だが、学校や病院など防災拠点となる公共施設の耐震化の歩みは遅い。2008年度末の全国での耐震化率は65%だ。03年度末から14ポイントしか上がっていない。
 本県は2度の地震に遭いながら61%と全国平均を下回っている。多大な犠牲の上で得た阪神そして中越、中越沖の教訓を生かしているとは言えない。耐震化を喫緊の課題として改善に取り組んでほしい。
 着の身着のままで放り出された被災者にとって、公共施設は唯一のよりどころと言っていい。そこが大きな被害を受け機能しなければ、混乱に拍車を掛ける。助かる命も助からない。
 阪神は大都市直下型の恐ろしさを私たちに教えるものでもあった。200万都市の首都を襲った今回のハイチ地震も同じだ。これらの教訓を、将来予想される首都直下型や東海大地震などにどう生かすかである。
 地震はいつどこででも起こり得る。このことを頭にたたき込んでおく必要がある。避難場所や避難路の確認などは日常的に行いたい。家族で連絡方法などを決めておくことも大切だろう。
 四川大地震では学校が倒壊し、多数の生徒が下敷きとなって死亡した。ハイチでも学校が崩壊しているという。子どもたちの安否が気掛かりだ。
 病院も崩れ落ち、満足な治療が行えず、負傷者が路上にあふれている。建物の強度不足は明らかである。地震への備えがなかったのが残念だ。
 地震が宿命なら、被害を最小限に抑える工夫をするしかない。救援態勢の充実とともに、阪神の悲劇を世界に発信し続けるのも、地震国日本に課せられた大きな役目ではないか。

新潟日報2010年1月17日