県内暴風雪 ゲリラ型への対応を急げ

 新潟の冬の厳しさをあらためて思い知らされた。それと同時に雪国が持つ「抵抗力」が弱まっているのではないかとの不安も募る。
 県内は13日から冬型の気圧配置が強まり、非常に強い風と大雪に見舞われている。
 下越地方を中心に約5万戸が一時停電した。交通機関もJR信越線などの列車が運休し、国道や高速道路では事故が相次いだ。上越市の上信越道では、約600台もの車が長時間にわたって立ち往生した。
 新潟地方気象台によると、強い冬型は15日まで続く見込みだ。関係機関は復旧作業に全力を挙げるとともに、これ以上大きな被害が出ないよう、細心の注意を払ってほしい。
 暴風雪は、長い海岸線と背後の山に囲まれた本県の宿命といっていい。2005年暮れの「新潟大停電」や、4年前の「平成18年豪雪」を思い出した県民も多いはずだ。
 一方で、1990年代以降、少雪傾向が続いているのは間違いない。気象庁は今冬も「暖冬少雪」と予測していた。夏の豪雨と同様、冬の暴風雪もゲリラ化しているとしたら気掛かりだ。
 雪による死傷者が相次いでいる。雪下ろし作業や除雪機での事故などで、これまでに50人以上が死傷し、既に昨冬の14人を上回っている。週末にかけてが心配だ。県は雪下ろし事故に注意するよう、市町村を通して住民に呼び掛けている。
 死傷者のほとんどは高齢者だ。屋根から転落したまま、誰にも気付かれずに雪に埋もれていたという悲劇が絶えない。一人暮らしや高齢者世帯が増えていることが背景にある。
 自治体や警察は、雪下ろし作業はできるだけ複数で行うよう促している。だが、そうはいかないのが現実だ。積雪の状況に応じて、機動的、広域的に主導できるチームやボランティア組織の活用を図りたい。
 頻発する異常気象に対して、行政や関係機関は適切な体制を整えているか。再点検を急いでほしい。
 一気に大量の雪が積もった後の災害に注意しなければならない。寒気が緩み、気温が上昇すると、表層雪崩や地滑り、融雪災害が発生する恐れがある。雪崩が中山間地の民家を襲ったり、集落を孤立させたりすることのないよう、危険な地域をパトロールし、警戒を続けたい。
 除雪体制は十分機能しているか。市町村などには住民から多くの苦情が寄せられているという。いつでも道路を走れるように除雪してこそ、地域の安全確保につながる。
 雪に強い地域は、ほかの災害にも強いといわれる。暖冬が続いたからといって、備えを怠ってはならない。

新潟日報2010年1月15日

ハイチ大地震 国の危機に支援を尽くせ

 カリブ海のハイチをマグニチュード(M)7・0の大地震が襲った。地震による死者は10万人を大幅に上回るとの見方がある。
 被災の全容が明らかになるにはかなりの時間を要するだろう。しかし現地から届く断片的な情報からだけでも、とてつもない災害であることは疑いを入れない。
 国際社会は直ちに立ち上がり、一人でも多くの人命を救わねばならない。地震国であるわが国は大きな役割を果たすことができる。過去の被災経験で蓄積したノウハウに裏付けられた人的、物的な支援を急ぐべきだ。
 ハイチは人口959万人で、中南米の最貧国の一つだ。長く続いた軍事独裁政権から1988年に民政復帰した。政情は不安定で治安は国連平和維持活動(PKO)に頼っている。
 自立と安定に向けて大きな課題を抱える小さな国家を地震は直撃した。
 震源は200万人が密集して暮らす首都ポルトープランス近郊で、10キロと浅かった。それが被害を大きくしているようだ。大統領府や病院など主要な施設の大半が倒壊し、水道や電気などライフラインは壊滅した。
 地震の規模や震源の様相、建物の下敷きによる死傷者が多い大都市直下型であることが阪神大震災を想起させる。建物の耐震性の低さが犠牲者増大の一因との見方もある。
 まずは建物の下敷きになった人々を一刻も早く助け出すことだ。各国から迅速に救助隊を投入する必要がある。PKOを担う国連ハイチ安定化派遣団本部が倒壊し多数の兵士が死亡した。緊急活動に当たるべき政府機関や国際機関の被災の大きさが気に掛かる。
 医療、衛生、食料面など、物資援助も急がねばならない。救える命をきちんと救う態勢が要る。
 遺体が放置されたままの路上で、不安な暗闇の夜を被災者は過ごしている。「できるのは祈ることだけ」の状況をこれ以上長引かせられない。
 米国、中国、フランス、アイスランドなどは救助隊を現地に送った。米国は治安悪化に備えた地上部隊の派遣も検討している。各国や国連による支援が本格化しようとしている。
 日本政府は14日、500万ドルを上限とする資金協力や物資供与、医療支援に向けた調査チームの派遣を決めた。発生から1日以上たっている。いかにも反応が鈍い。現地ニーズを踏まえながら、どう支援していくのが最善か今後も検討を続けてほしい。
 各国と協調しつつ、さまざまな形での人的支援の拡大を図っていくべきだ。治安面は慎重に見極めねばならない。地理的に遠いという制約もある。しかし、日本の経験を生かせる場面は必ずあるはずだ。

新潟日報2010年1月15日